音楽祭も残すは二日間のファイナル・コンサートのみ。各国の奏者たちと随分と仲良くなり、英語・フランス語・スペイン語・ポルトガル語・ドイツ語・ウクライナ語・日本語をエクスチェンジしあう日々です。リハーサルの調子も上々。「ぐるりよざ」を狙い通りに組み立てていくことが出来ています。
オーケストラだけでもフルートが8本もいてくれる大編成、かつウクライナの素晴らしい合唱団が加わってくれて感動的な演奏になりそう。リハーサル時間が限られているため、通訳を挟む時間は当然ないので、空き時間にウクライナ語を数字だけ覚えて効率化を図り、絶対に不明瞭にならないようクリアに指揮して乗り切るなど、いろんなチャレンジをしています。
短いようで長いこの期間、ほんとうに色々なことがありました。フランスのテレビから取材を受けて、大々的に放送して頂きました。
さらには、スペインのバンドから「俺たちの持ち曲一曲だけ指揮してくれよ!」と言われて、リハーサルもなく突然客席から引っ張り出されたり。譜面台にあった楽譜にチューニング中の10秒で目を通して指揮。こういう時のアドレナリン出ている感がたまりません。いい曲だった!!
トロンボーン&チューバのみんなからは、「日本へのレスペクトとウクライナへの連帯を示したい」と言われて急遽Song For Japanを指揮することに。
夜は毎晩、この音楽祭に参加している各オーケストラからコンサートにご招待を頂いてそれぞれの演奏会を回らせて頂いています。スペインとメキシコの合同オーケストラによるマルケスのダンソンを客席で聴いたときには涙が溢れてきました。スペインとメキシコ、近いようで異なるこの二国の奏者が、ひとつの音楽と「スペイン語」という言葉で連帯し、devoteする様子に感動したのです。
まさしく、Fraternité という言葉が大切であるように、国というものを通じて育まれた異なる文化歴史があり、その差異があるゆえに、それを越えて一つになる様子に我々は心打たれるのだと痛感しました。
それにしても、いわゆる「お国もの」を演奏し始めた瞬間、オーケストラの力量が何段階も飛躍するのです。色彩も音量も、ボウイングも方向性も何もかも変わります。あんなふうに腰をスイングさせて指揮するなんて思いもつかないし、pizzをあんな豊かさで奏でるなんて!血や言語ということもさながら、究極的には「確信」なのかもしれません。果たして日本には何があるのか?そんなことを考えずにはいられませんでした。心地よい疲れと、頭に引っかかった問いと共に眠りにつきます。