大学オーケストラの危機

大学オーケストラの危機だ。このままでは、この文化が失われてしまう。もちろん大学オーケストラのみならず他の文化芸術やスポーツの部活・サークルも同様に危機にあるだろう。しかしここではとにかく、私が長く関わってきて実情を知っている「大学オーケストラ」の現状について書いてみたい。

最初に書いておきたいのは、音楽を特別扱いしてほしくてこの記事を書いているのではないということ。人命に比して優先されるものは無い。そのうえで、「大学における部活やサークル活動に共通する(であろう)問題を言語化したい」かつ、「サークル活動が二年停止することの影響の大きさを整理しておきたい」というのがこの記事の趣旨である。

さて、一般大学の大学オーケストラというのは、大まかに言えば以下の構造で成り立っている。

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・大学によって違いはあるにせよ、初心者が数割(肌感覚では四割から七割)を占める。
・つまり大学からその楽器をはじめて、半ば「無理やり」ステージに立つ学生も多い。ステージに立つために必死で間に合わせるようにして上達する。それを三年や四年続けていくうちに、最終的には結構弾けるようになっていく。


・トレーナー(各楽器のプロ奏者)がいつも楽器のレッスンをしてくれるわけではない。金銭的にも予定的にもそれは不可能に近い。従って、練習のほとんどの時間は、上級生や経験者が下級生や初心者に教えることで成り立っている。
・いわゆる大都市圏以外の大学オーケストラでは、各楽器のトレーナーやエキストラをその地域で十分には手配できず、県外から招致していることも多い。(したがって県外からの移動制限がかかると致命的になりえる。)

・演奏においても運営においても、「代」を単位として動いている。
・演奏会の運営は、執行代(だいたい3年生)が行う。次世代の執行代(つまりその時には2年生)にも一部仕事を割り振ることで、執行代のサポートをしてもらいながら引き継いでいく。
・演奏の主軸になるのも執行代の学生たちであることが多い。
・執行代は演奏会を終えると(つまり4年生以上になると)団への関わりが薄くなることがほとんど。卒論や就活や院での研究などで多忙となるためであると同時に、後輩たちが執行代をやりやすいようにという経験上の配慮も含まれている。

・大学内の施設を活用し膨大な練習時間を確保することで上達する。従って大学構内に入ることができない=大学施設利用不可となると、同様の練習時間の確保は現実的に極めて困難。
・楽器のいくつかは大学からのレンタル楽器。従って大学構内に入ることができない=楽器持ち出し不可となると個人練習すら極めて難しくなる。
・楽器を持ち出すことができたとしても、自宅での練習はよほど環境が整っていないと困難。防音環境や広さの点で金管楽器や打楽器、コントラバスなどの練習はほぼ不可能。特に下宿生の場合は小型楽器であっても至難だろう。(そしてこのような状況ではカラオケ等の施設も閉まっていることが予想される。)
・ゆえに、大学構内を使用不可とされると個人練習ですら非常に困難になる。そもそも楽器自体に触れることができない、楽器はあるけど弾く環境がない…etc.

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全てではないにせよ、多くの大学オーケストラにおいてこのような状況がある。このことを踏まえたうえで、1年ないしは2年にわたり活動および演奏会を封じられると何が起こるのか。簡潔に書けば、「1年間ストップすると次世代の運営が途端に難しくなる」「2年間ストップすると、長い歴史を持っている団ですら、ほぼ白紙に戻る。」ということ。大学オーケストラに関わっている人にとっては自明なこともあろうが、そうでない方にもご理解を頂くことが極めて重要であるため、以下では2019年,2020年,2021年と時系列で詳しく見ていくこととする。

なお、ここでは大学オーケストラの幹部代は3年生という設定で進める。4年生を終えると就職ないしは大学院生となるが、実質的には団に深く関わらない立場となることが多いため、団は原則的に4年生までで構成されていると考えることにする。また、定期演奏会は年内に1度という想定で考えている。

赤字は、運営経験ありの世代。下線は、大学オケに入ってから定期演奏会の本番ステージで演奏した経験を持っている世代である。まとめは一番下にあらためて記載するので、詳細な時系列が不要な方は最後の「ここまで」の点線まで読み飛ばされたい。

——————-時系列による整理ここから——————-

(2019年)コロナ以前=演奏会を無事に開催できた最後の世代
4年生:運営(2018年度)から退いた代
3年生:運営代

2年生:3年生の背中を見ながら運営を覚える代

1年生:入学したばかり

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(2020年)コロナにより4月以降ほぼ練習できず。演奏会も開催できないまま代替わりが起こる。
4年生2019年度の3年生(運営代)。4年生になり運営から退く
3年生:2019年度の2年生。3年生になり運営代に。ただし実際の運営経験は未。

→コロナで2020年度演奏会を開催できないまま代替わりとなる。

2年生:2019年度の1年生。2年生になり、3年生の背中を見ながら運営を覚える代。→コロナで2020年度演奏会を開催できないまま代替わりとなり、背中を見ることもできず。引き継ぎも困難。しかし翌年は運営代にならざるを得ない。

1年生:2019年度の高校生or浪人生。入学して活動しはじめる代。
→コロナで2020年度演奏会を開催できないまま1年が終わる。そもそも新歓もあまりなされず、度重なる緊急事態宣言や演奏会中止で楽器を触る時間や指導を受ける時間もほぼ無いまま1年が終わる。

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(2021年)(コロナ2年目。2世代にわたり演奏会開催できないところもあり。)
4年生:2020年度の3年生。演奏会を開催できないまま4年生となり、運営から退く。
→2021年度も演奏会開催できない場合、定期演奏会経験は2019年(当時2年)のみ。

3年生:2020年度の2年生。2020年度演奏会開催できずのため、運営を引き継がれることなく運営代に。
→2021年度も演奏会開催できない場合、定期演奏会経験は2019年(当時1年)のみ。

2年生:2020年度の1年生。2020年度演奏会開催できずのため、そもそも新歓以降練習もろくにできないまま2年生に。
→2021年度も演奏会開催できない場合、2年間ほぼ練習できないまま。定期演奏会経験なし。

1年生:2020年度の高校生or浪人生。そもそも新歓も十分でないまま入部、しかし2021年度演奏会開催できない場合、1年間ほぼ練習できないままになる。定期演奏会経験なし。

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(2022年)2020,2021と演奏会開催をできなかった場合、運営を知っている代が完全にいなくなる!定期演奏会経験者が1世代のみになってしまう。
4年生:2021年度の3年生。2020年度、2021年度と演奏会開催できずのため、運営のことについてはよくわからないまま運営から退く
→2022年度も演奏会開催できなければ、定期演奏会経験は2019年(当時1年)の1回のみで卒団ないしはOB・OG的なポジションに

3年生:2021年度の2年生。2020年度,2021年度と演奏会開催できずのため、そもそも練習がほとんどできないまま運営代かつ演奏の主軸代に。入学以降そもそも定期演奏会経験なし。
→2022年度も演奏会開催できなければ、3年間定期演奏会経験なしのままメインの代からも退くことに。

2年生:2021年度の1年生。2021年度の演奏会開催できずのため、練習できないまま2年生に。入学以降定期演奏会経験無し
→2022年度も演奏会開催できなければ、定期演奏会の経験がないまま運営代の3年生になる。

1年生:2021年度の高校生or浪人生。

——————-時系列による整理ここまで——————-


まとめてみよう。2020年に演奏会ができなかった場合、2021年現在の団はどういう状態でスタートすることになっているかというと、「演奏会を運営した経験がある学生はほぼゼロ(あるいは4年生に僅かいるか?)」「定期演奏会のステージで演奏したことがあるのは3年生,4年生のみ」という状態なのだ。

次いで、もしも2021年の演奏会まで出来なくなったとすると、2022年の団はどうなるか。「演奏会を運営した経験がある学生はほぼゼロ」「定期演奏会のステージで演奏したことがあるのは4年生の代のみ(ただし演奏当時1年生)」「3年生:運営はおろか、3年間練習自体十分にできていない/2年生:2年間ほぼ練習できていない/1年生:入ったばかり」という布陣で回していくことになる。

つまり活動の蓄積がほとんど初期化されたに等しい!!!最初に掲げた前提条件の場合、長い伝統を持つ大学オーケストラであっても大体同様の現象が起こるのではないだろうか。2年連続で定期演奏会が開催できないということは、団の歴史をリセットしてしまうぐらい大きなインパクトがあることなのだ。そして、一度途切れたものを再興するのには膨大な時間がかかることは言うまでもない。

だからこそ、たとえ無観客であったとしても、何とかして演奏会を開催できる方向に進めてほしいと思うし、大学として寛大な措置をお願いしたいと心から願う。極論をいえば、演奏会自体が中止になるよりは、「当日本番のステージだけは活動OK」となったほうが団の継続性の点ではまだ救いがある。そもそも、無観客開催の本番ステージが禁じられる理由は今もって良く分からない。(関係者の徹底的な取り組みあってこそだが)コンサートホールの客席でも舞台でもクラスターはほとんど起きていないのだから。活動や練習が十分にできず、聴いて頂くクオリティまでたどり着かなかったとしても、ステージに立つことができるだけで、この現状では大いなる前進なのだ。

話を少し広げるならば、これは音楽を生業とするプロ奏者にとっても強く関係する問題である。大学オーケストラに所属する学生たちは、アマチュアとして演奏文化の主たる担い手であることはもちろん、プロのコンサートの聴衆層のひとつでもある。数年間大学オーケストラで楽器を弾くうちに、定期演奏会で演奏する曲を勉強も兼ねて足を運んだり、オーケストラっていいなと目覚めたり、トレーナーとして指導頂いている先生が出演しているのを聴きに出かけたり、そういうふうにしてプロオーケストラと関わりを持つ学生は決して少なくない。

したがって、いま大学オーケストラに訪れている「危機」をそのままにしてしまうのは、めぐりめぐってプロのコンサートの聴衆を失うことにもつながる。興行としての演奏は聴衆なしには成立しないし、若いファン層の開拓が急務と叫ばれて久しいことも承知の通り。こうした状況を踏まえれば、大学オーケストラの危機はプロオーケストラの将来的な危機に強く繋がりうる問題のはずだ。(じゃあどうするのか?ということだが、たとえばプロオーケストラは、コンサートが中止になってしまったその地域の大学オーケストラの学生を特例的に招待するなどの施策を打って連帯していくのはどうだろうか。行動制限の問題など複雑な要素が絡み合ってくるだろうし、試算もしていない単なるアイデアに過ぎないが、自分ならばこうしたことを模索・提案してみたい。本来の形で演奏会を出来なかった学生たちの無念はそれでも到底晴れるものではないとはいえ、その無念を「仕方ない」で終わらせずに、せめてほんのわずかでも分かち合い、共に文化芸術の未来に繋げていくことが必要だと信じる。)

本論に戻ろう。2年連続で活動できない・定期演奏会が開催できないということは、上記のような背景から、団の歴史をリセットしてしまうぐらい大きなインパクトがあることなのだ。2年のストップで団の蓄積はほぼ初期化される。それぐらい、大学オーケストラという文化はいま深刻な危機にある。そのことを整理して伝えたかった。

繰り返しになるが、音楽を特別扱いしてほしくてこのように言っているわけではない。大変な状況にあるのはみんな一緒だ。飲食も旅行も、何より、医療の現場の苦しみを思えば軽率なことは言えない。しかしこの構造は大学オーケストラに限らず他のサークルでも似たところがあるはずだ。命とサークル活動では命のほうが優先されるべきものであるとしても、それを承知のうえで、サークル活動が二年停止することの影響の大きさを整理し主張しておきたいというのがこの記事の趣旨であった。

人生の時間は等価ではない。自分よりも遥かに彼・彼女たちの一年は重い。それは自分が大学生だった頃の一年を振り返れば容易にわかることだ。どうかその一日だけでも、ステージに立たせてあげてほしい…。

11 thoughts on “大学オーケストラの危機

  1. 高畑俊一

    詳細に渡る考察を有り難うございます。
    概ね、その通りです。

    私は、某私立大学交響楽団のOBOG会長を務めています。

    昨年春より、大学は廃墟のようになり、リアル授業は無くなり、卒業式や入学式も開催出来ませんでした。
    又、学内に入れない。練習出来ないという事で、大学オケ活動は座礁状態に陥っています。

    我が後輩たちは、何とか秋から学内立ち入り条件が緩和されたので、昨年12月に定期演奏会を挙行しました。
    しかし学内では練習出来ないのという事で、学外の有料施設を使いましたが、会場代金や楽器の運搬など多額の費用負担を余儀なくされました。

    本番自体は(練習回数の少なさにより)例年より傷が多い演奏でしたが、逆に鬼気迫るものが伝わって来て、拝聴していたOBOG連はじめ観客の多くは大変感銘を受けたと思います。

    このような大学交響楽団の危機に対し、OBOG会では会員に寄付の呼びかけを行い、楽団所有楽器の整備や修理を丁寧に行い、相当数の予備楽器も調達するなど、資金面でバックアップを行いました。
    同時に、OBOG会と現役運営役員が一緒に問題解決を図る為、SNS内で専用スレッドを開設し、その距離を近づけるように画策しました。又お互いのホームページを拡充し、リンクを図るなどの工夫を更に進めようと考えています。

    これらの活動が奏功し、本年度は十分な新勧活動をする時間が取れなかった割には、例年以上の新入団員が入部してくれました。
    先日、楽器の搬入搬出の為、大学部室へ参りましたが、現役役員のモチベーションが例年以上に高まっている事を肌で感じました。

    何とか輪郭整備が少しは進展しましたので、新たな活動が出来るように現役・OBOG諸氏に発破を掛けて行こうと念じています。

    • Yusuke Kimoto

      コメントありがとうございます。素晴らしい取り組みをされていらっしゃいますね。特に、「楽団所有楽器の整備や修理」や「予備楽器の調達」に対する支援をされているのが素晴らしいと思いました。これはある程度の経験や知見がなければ、修理の出し先にも悩むことでしょうし、何よりそれなりに金銭的な負担がかかることですから、学生だけでは中々手が出せない内容であると思います。こういう点でOBOGの皆様がサポートされていらっしゃるというのは大変にありがたいことですね。

      • 松本宣宏

        興味深い読ませていただきました。私は学生オケが好きでかなり演奏会にも足を運んでいました。昨年度活動がほとんど出来ない中、配信ライブで演奏会届けてくれた楽団さんも鬼気ある凄みが感じれる演奏会でした。文章の通り今年度再開した楽団さんも運営状況が本当に大変なようです。池袋のR大の楽団さんも昨年度練習場確保、楽器移動でとんでもない経費がかさみコロナ渦でバイトもままならない中。卒業生団員さんがいろいろ支えて下さり何とかなったようです。歴史がありOBOGがきちんと繋がっている楽団さんはともかく規模の小さな大学の楽団さん、本当に大変なようです。おっしゃる通り卒団生は将来のプロオーケストラの聴きてになるばかりではなく、社会人になり赴任先の、市民楽団を支えることも大切と思います。地方の場合、プロオーケストラの演奏会機会が少なく、その土地の市民楽団が街の音楽文化を担う大切な役割もあります。いろんな問題点が重なりこのフォームでは、話しきれない点もたくさんあります。又文章出されたら読ませていただきます。

        • Yusuke Kimoto

          コメントありがとうございます。おっしゃる通り、とくに大都市圏以外の卒団生は、社会人となって地元に残った場合、市民楽団の担い手になる方が大変に多いですよね。私も福井大学フィルハーモニー管弦楽団を7年間にわたり指揮しておりますが、地元に残った卒団生の多くはそのまま地元のアマチュアオーケストラに入って活躍している印象です。(同様に福井にはプロオーケストラがありませんので、地元のアマチュアオーケストラと大学オーケストラが街のオーケストラ文化の担い手となっているかと思います。)この状況が続くと初心者の入部が困難になっていく現象や、インカレ団体の苦しみなど、ここには書ききれなかった問題がまだまだ沢山あると思いますので、また記事をあらためて執筆したいところです。引き続きお読み頂けましたら幸いです。

      • 高畑俊一

        有り難うございます。このような現役支援の取り組みをOBOGに書面で報告したところ、昨年度以上の寄付が集まりそうです。
        やはり問題点や課題、そのプロセスを共有する事で、歴史は紡がれるのだと思いました。

  2. 初めてご連絡させていただきます。突然のコメント、失礼いたします。
    関西の国立大オケOBの者です(50代、男性)。私自身はオケ活動には現在、携わっていませんが、昨年来の学生オケの活動停滞について、非常な危機感を持って見守ってきました。そのことについて、今年3月以来、fbにて投稿を公開し、所属団体や年代を越えた連帯と協力ができないものかと考えています。
    出発点は、自分の出身大学オケの活動再開がままならない現状に対する応援のつもりだったのですが、この問題は日本のオケ文化、クラシック音楽文化、又は芸術文化全般の存続にかかわる問題だと感じるようになりました。より大きな観点で、社会全体問題として取り組まれなければならないと感じています。
    今回、そのオケの後輩からの情報提供で、こちらのご投稿を拝読し、まさに私がfb上で書いていたことと非常に近い考え方と論旨だと驚きました。とても勇気づけられた思いがしています。
    https://www.facebook.com/nobuhito.furuya.7/posts/10220281576972080

    私の出身オケの中だけで話題提供をしていても、実際的な効果はなかなか得られず、そのうちにマンボウだ、第3次緊急事態宣言だ、変異株だ、宣言の延長・拡大だ、、、ということで、一歩も動くことができない状況になってきました。せめて、どうにか稼働している大学オケ(九大フィルなど)やアマチュア・オケの力も集めて、この先のために、知恵と勇気を持てないものかと思っています。
    https://www.facebook.com/nobuhito.furuya.7/posts/10220233158321644
    https://www.facebook.com/nobuhito.furuya.7/posts/10220307229213370
    https://www.facebook.com/nobuhito.furuya.7/posts/10220350749861359
    https://www.facebook.com/nobuhito.furuya.7/posts/10220397972801903

    先日は、神戸大サマーコンサート(5/23)、京都大定期(6/15、17)の中止(延期)が発表されました。尾の閉塞的な状況に、何か希望をもたらしたいと願っています。

    • Yusuke Kimoto

      コメントありがとうございます。さっそくFBの投稿を拝見させて頂きましたが、私では考察が至らなかったところまで記載されていて、私のほうこそ、「まさにそういうことだ!」と、古屋さまの記事に頷かされました。昨年も定期演奏会ができなかったのに、代替わりして執行代となり、運営経験もほぼ無いままこの事態を打開できるようなリーダーシップを発揮することは非常に困難ですよね。といっても、これを二年、三年と重ねてしまうとより事態が硬直してしまうのも事実ですから、「長期的な「休止」が、このまま「停止」になって、取り返しのつかない文化的損失をもたらしかねない日限が、刻一刻と迫っている」ということはまさしくおっしゃる通りと思います。私もそうした危機感から今回筆をとった次第です。何より、深い考察とあわせて「演奏者は、演奏することによって元気になる」という、シンプルながら普遍的な本質に迫られていることにも感銘を受けました。演奏者の一人として、大いに共感します。

      この先どうすればいいのか、ということは私もまだ明確な道筋が見えているわけではないので、ぜひ色々とお知恵を拝借させて頂けましたら幸いです。みんな自分たちのことだけでも辛い時期ですが、みんな辛いからこそ、プロも、アマチュアも、ホールも、さらに一体となって協力して打開していくことが必要ですね。まさしくこれは、社会問題と言えることであると思います。

      • 古屋靖人

        丁寧な返信をいただいて、ありがとうございました。まずは共感していただけて、とても心強く思います。
        いまざっくりと考えていることですが、現役の活動を取り巻くグループとして、A=現役の執行部(一番の当事者)、B=現役外の執行部(トレーナー、顧問など、ある程度恒常的な人材)、C=OB・OG(かつての当事者だが、現在のスタンスはバラバラ)、D=プロ業界、E=一般社会、があると思います。これまでの過程の中で現役に近いところでヒアリングして深刻だと感じるのは、Aには、もうあまり余力がないということです。そして、私の今の実感として、Cを生かすのはかなり難しいと思っています。となると、今から何か事態を動かせる可能性があるとすれば、Bか、Dだろうという気がしています。
        一つの腹案は、全国の大学オケの間でBのネットワークを作れないか。
        もう一つは、Dを細かく見ると、D1=演奏家・指揮者などのほかに、D2=業界人・団体・施設などいわば周辺環境的なグループ、そしてD3=ジャーナリズムや評論家といった発信手段を持っているグループがあるように思います。これらの諸グループが、目的と状況に応じて効果的に動くことができれば、何かできないか、というところまで考えてきたところです。

  3. Yusuke Kimoto

    たくさんの方にシェアして頂いたおかげで、5月18日現在で同記事は30万インプレッションを頂きました。ありがとうございます。この問題は2020年にも書いたことがありますので、よかったらこちらも合わせてご覧ください。
    https://y-kimoto.com/68-2/

    • orange hall

      地域芸能音楽文化向上に取り組んでいる
      地域のeventhouseです。
      グループ分けではD2に入ると思います。

  4. 運動系サークルだった者

    オーケストラの界隈の文化なのか、実名のコメントが多いようですが匿名で失礼します。

    同様の問題、わたしがかつて所属していた、大学の運動系サークルでも生じています。
    具体的には自転車旅行のサークルなのですが、先日、新型コロナウイルスにより一切活動できず廃部危機であるという内容のOB会報が送られてきました。送られてこずともそうなることは想像していましたが……。

    この記事で書かれているのと同様、技術継承(自転車や登山などアウトドア系サークルならば安全な野外活動のノウハウ)の問題があるのはもちろんですが、
    大学から「部」として認められて、人数が仮にゼロになっても書類上は消滅しない団体と異なり、人数がゼロになったら公認自体が消滅してしまうという問題もあります。

    このことについては、わたしはかなり悲観的で、おそらく学生時代を過ごした小さいコミュニティの文化は、このまま消滅してしまうのだろうと思っています。

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