なぜ福井で?-音楽に何ができるのか。

福井で指揮して五年目になります。つい先日、来年(六年目)も指揮することが決まり、福井はもう私にとって第二の故郷のような場所となりました。この地で長く暮らしている方々には到底及ぶべくもありませんが、これまで見聞きした経験を活かし、福井の活性化に少しでも貢献したいと思っています。


そんなことを考えていた時に「みくに未来ホール」という福井県坂井市の素晴らしいホールと出会いました。今年はここで三つのプロジェクトを開催させて頂きます。

1.「Social Orchestration」という概念、および「オーケストラの未来」を考える拠点を作る
- Amasia International Philharmonic Summer Camp

2.これまで一緒に演奏してきた奏者たちが集い、福井の食文化を楽しみながら音楽する「お祭り」を作る
みくに初見キャンプ 日本海フェスティヴァルオーケストラ

3.福井の方々にとって、オーケストラとの距離が近くなるようなコンサートを考える
-「0歳児からのクラシックコンサート」および「みんなのオーケストラ」公演

 

 

今回書きたいのは、2.の「みくに初見キャンプ」(日本海フェスティヴァルオーケストラ)についてです。これはただ初見大会をやって楽しもうというのではなく、この五年間福井で指揮して私なりに感じた、福井のクラシック音楽文化の課題解決および福井の活性化に寄与するようにという思いから作ったものです。このキャンプおよびオーケストラを通じて何が成されるか?それは、

 

大学オーケストラ特有の「編成」問題を超えて、もっと幅広いレパートリーに触れることができる。
→大学オーケストラには、編成や団員数、予算や技術などの問題から、実は極めて強い曲目の制約があります。しかもしばしばそれは大学オーケストラに限った話ではないのです。北陸のアマチュアオーケストラの20年ぐらいの演奏曲を調べてみたところ、レパートリーが意外と限定されているなという印象を受けました。(そのなかでも、福井交響楽団さんは時に非常にチャレンジングな選曲をされていて素晴らしいなと思います)
確かにあまり演奏されてこなかった曲にはそれなりの理由があるのも事実で、コンサートで演奏するとなると色々大変なのですが、遊びで合わせてみよう!となるともっと気軽に色んな曲ができるはずです。それに参加したり客席で聞いてくださった方にとって、「今後自分の団でもやってみたい」とレパートリーを広げるきっかけになればと思っています。

・世界で研鑽を積む若手プロ奏者と一緒にオーケストラに乗ることで、「オーケストラのなかでどう演奏すればいいのか」という点での実地レッスンを受けることができる。
→「プロから音楽をマンツーマンで教わる」という点での個人レッスンの機会は福井に少なからずありますが、オーケストラのなかでレッスンを受ける機会というのはあまり多くありません。それはこの県に、いわゆる「音楽大学」が無いということとも関係しているのかもしれません。ここで重要なのは「若手」プロ奏者であるということです。たとえば福井大学フィルの学生さんとも年齢があまり変わらないが、音楽の道に邁進しているような若手プロ奏者と一緒することで、人生選択の多様さや同年代としての刺激を互いに受けてもらえると思います。

 

・県内のオーケストラプレイヤーとはもちろん、県外のオーケストラプレイヤーとも繋がる機会を作ることができる。
→福井のオーケストラ同士の交流はかなり成されているようですが、合同オーケストラなどの機会はあまり多くないようです。かつ、県外のプレイヤーと福井で合同オーケストラをする機会は、極めて稀だと聞いています。(以前開催されていた北陸アマチュア・オーケストラ・フェスティバル」のように、福井から県外に出かけて行って合同演奏をする機会は少なからずあるようです。)


・宿泊と飲食を加えることで、福井の観光活性にささやかながら寄与したい。
→五年間福井で指揮して私が強く思うことは、福井はほんとうにいい土地であるということ。私が知っているのは福井市と坂井市のほんの僅かなエリアに過ぎないのですが、それでも一切飽きないほど魅力的な場所です。ぜひみなさんに来て頂きたい。来て、泊まって、食べて頂ければ必ず好きになってもらえると確信しています。福井には蟹もあれば魚(最近は「ふくいサーモン」がアツい!)もあり、若狭牛もあればおろし蕎麦もあります。お米は「コシヒカリ」発祥の場所で最近は「いちほまれ」も誕生したし、日本酒では黒龍,凡,花垣,白岳仙,常山,九頭龍,早瀬浦,一本義,紗利, 伝心,越前岬…と書ききれないほど銘酒があります。焼き鯖寿司はいつ持ち帰っても旨いし、秋吉の焼き鳥は純鶏を40本ぐらいテイクアウトしてもペロリとイケてしまう。お世話になっている割烹の大将の包丁さばきはいつまでも見ていたいと思えるほど芸術的だし、白えびのかき揚げをあんなにふわふわに焼けるなんて神業としか思えません。

実際、この五年間で私の友人たちが100人ぐらい遊びに来てくれて、みんな福井のファンになってくれました。だけど、もっと来て欲しい!!!まず来る機会がなければ良さは知ってもらえないので、オーケストラという営みを通じて、福井に来てもらえる機会を作りたいと思うのです。もうすぐ新幹線が通ろうとする今こそ、福井を盛り上げることに音楽で少しでも貢献できるのではないか。そんな想いを抱いています。

 

今回の「みくに初見キャンプ」そして日本海フェスティヴァルオーケストラという取り組みはこうした考えから生まれたものです。思いに共感してくれた友人たちが、日本全国はもちろんウィーンやスイスからも駆けつけてくれることになりました。そして福井大学フィルをはじめ、これまで一緒に演奏してきた福井や日本海沿岸の方々も次々と参加の連絡を下さっています。

やるからには、中途半端にやりたくはありません。ここでめいっぱい面白いことをしたい。そして、それが一回限りではなく続いていくようにしたい。いつかは、お盆の時期にたくさんの公演が織りなされる「フェスティヴァル」のようにしたいのです。日本海フェスティヴァルオーケストラという壮大な名前には、そんな未来を込めています。ですからこのオーケストラの「遊び」は初見大会だけに留まらず、もっと刺激的なことも考えています。

後戻りできないように書いてしまいましょう。昨年の国際指揮コンクールで指揮したポルトガルのオーケストラ(Atlantic Coast Orchestra!日本語にすれば「大西洋岸オーケストラ」です。)や、つい先日指揮したばかりのモロッコ-カサブランカの合唱団など、海を共通項として、これまで・これから縁のある音楽家たちを福井に招いて合同演奏をしたいのです。日本海と大西洋のオーケストラ・合唱団で合同演奏-お祭りなんてワクワクしませんか?途方もないと思われるかもしれませんが、実はモロッコの合唱団とは既に話し始めています。これがもっと繋がっていって、いつかは七つの海のオーケストラと我々のオーケストラで合同演奏ができれば…そんな将来を妄想しています。

こんな大きな構想に共感してくださり応援してくださる方々や友人たちには本当にどれだけ感謝しても足りません。旅情ある電車にゆったり乗り、めいっぱい音楽して、美味いものを食べて、温泉に浸かって日本酒で気持ちよく酔う…。まずはそんな初見キャンプにしたいですね。

ちなみに、福井は皆さんが想像するより「すぐ近く」にあります。大阪からサンダーバードで2時間弱・片道5000円ちょっと。名古屋からも同じぐらいです。東京からも、羽田空港→小松空港→バスで福井と行けば2時間ぐらいです。

私が大好きな音楽と、大好きになった福井をみなさんに楽しんでほしい。沢山の方々と一緒できることを心待ちにしています。

 

 

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