次なる挑戦

また新しい挑戦が始まります。エル・システマジャパンの相馬子どもオーケストラと来春の「第8回子ども音楽祭in相馬」に向けて練習開始。さまざまな想いを込めて、今年は昨年以上に本格的なプログラムを作りました。

ブラームスの一番はレッスンで「まだ君には早い!」と言われても諦めきれなくて、師の病室に通って枕元でスコアを広げた思い出の曲。「病から回復したら教えるから、それまで自らの指揮の哲学を磨いて待っておけ。」と言い残して、この曲を教えてくれることなく師は旅立ってしまいました。

それゆえにこの曲は特別なものとなり、機が熟するまでは決して手を出すまいと約10年寝かせました。その間にこの曲のオファーを何度断ったか分からないし、果たしてそれでいいのかなと悩んだこともあるけれど、今はそれで良かったと思えます。

「まだ早い!」ということの真意は、当時の自分が未熟であったということは勿論、作品の方から自分という扉を叩いてくれる日まで音楽しつづけろよという激励でもあったのかもしれません。同時に、「自分にとって特別だからまだ演奏しない」というような謎のワガママを持つことは幸せなことなのだ、というメッセージであったのかもしれない。そんなふうに思うのです。自分にとって特別なもの – それは、 表現者としての実存に深く結びついた<謎>と言い換えても良いでしょう。

なぜ今をその時だと思うのかはわからない。謎は謎のままです。でも、様々な巡り合わせに、今こそその時だと思えて封印を解きます。カンボジアで指揮した思い出深いバルトーク、レッスンの書き込みでいっぱいになったチャイコフスキー、そしてブラームス。

一体いまの自分に何ができるのか。愛してやまない相馬の子どもたちと、全力で指導してくださるトレーナーの先生方と、春までじっくり練習を重ねます。一音ずつ、一小節ずつ、小さなピースを組み上げて巨大な塔を作るように。

Last Modified on 2022年10月15日
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