「指揮の哲学」7回目の灘校土曜講座にて

母校の灘校にて土曜講座、3時間の指揮レッスン。遡ってみると今回が7回目でした。この10年で取り組んできたものが着実に重なってきていることに喜びを覚えます。慶應義塾大学での指揮講義も6回目ぐらいになりますし、福井大学フィルも指揮して8年。続けることは大切ですね。

気づけば10月・11月は指揮レッスンをさせて頂く機会が多く、全国各地で沢山の若い人たちと、この不可思議な芸術をめぐって格闘しています。そして、どのレッスンでも大切にしていることであり、とくに今年の灘で指揮の授業をして伝えたいと思ったことは、君は音と音のあいだに何を「発見」し、どのようにして想像力と感情を解き放つのかということでした。

中学生2年生のころに私の土曜講座を受けた子が、高校2年生になってもう一度受けてくれて(実は高1でも聴講していたので通算3回目だそうです。びっくり!)中学生のころには出来なかったエモーションの爆発を見せてくれたとき、私は心底感動しました。彼のこの数年間に、私のこの3時間の講義が「オブセッション」、つまり頭から離れないものとして添い続けられていたのだろうか。こんなに嬉しいことはありません。その瞬間に効くだけでなく、じわりじわりと遅れて染みつつ、そのうちにその人なりの発見を招くような講義こそが私の理想ですから。

特に灘の場合は、みなさん素晴らしく頭の回転が早いので、その場で分からないものを教えたいと思ってやってきました。ロジックを超えたい。理屈ではなんとも解決しがたいようなものを沢山伝えたい。「言ってることは良く分かるけど、なぜ出来るのかは分からない」「人間ってすごい!」そんな驚きと悔しさと衝撃を与えることがこの道に進んだ私の使命だと考えて、7回にわたる土曜講座を作ってきました。

毎年自分も成長していかねば彼らとは向き合えないので、土曜講座は自分にとっても試練のような機会になっています。特に今年は35歳を迎えたこともあり、ひとつの節目として自分に何が出来るか・自分が何を話すのかを自分でも楽しみにしていました。きっとうまくいったんじゃないかな。

3時間ほとんどノンストップだったのに、みんな食らいついてくれて嬉しかったです。沢山の感想と素敵な絵をありがとう。大切にします。(※学生さんより掲載許可を頂いています)

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