文化庁の補助金についてです。仕事が激減して窮状にあるアーティストにとっては大変ありがたい施策であり感謝しておりますが、思うところがありましたので、改善意見を送ってみました。
まずもって、申請に伸び悩んで予算が余っているというのは、申請しない芸術家の問題でもあります。せっかく予算を確保してくださったものを申請しないのは申請する側にも責任があります。不平不満を言う前に使えるものはめいっぱい使わなくてはいけません。我々は守られて当たり前の立場では決してありませんから、自分から情報を取りに行くというのがあるべき姿勢でしょう。
一方で、申請を増やせない理由の一つに、今回の申請要件やシステムが極めて難解であったということは確かであるように思います。これについては、実施側としても認識を持って下さっていて、第一次申請受付から第三次申請受付に至るまでのあいだに徐々に説明がわかりやすくなり、リーチを広げ、コールセンターにも種々の事例が共有されていっているようです。(それでもまだ相当に混乱していますが)ともあれ第一次から第三次に至るあいだに、申請要件や手続きが大幅に緩和され、ずいぶんと申請しやすくなったのは確かだと感じています。
しかし!!です。要件が次第に緩和されたことで、逆に第一次や第二次、つまり早めに申請した人とこれから申請する人とで公平性が取れなくなっている問題が生じています。これについては今のところ全く対応される気配がありませんし、認識されているようにも感じられなかったので、今回意見を送らせて頂いた次第です。意見せずに不平を言っても仕方ないですからね。
具体的には、第一次や第二次申請段階では交通費に「車」関係を含むことが原則的にできない(できたとしても、他に一切交通手段がないなどの例外的状況に限る)ことが明記されていたのに対し、第三次申請段階では感染症対策としてタクシーガソリン代などを経費に含みうることが挙げられます。
原則的にはこれらを含めることはできないという当初の要項ゆえ、第一次や第二次で早めに申請した方々は補助額の大きいA-2申請を諦め、小規模なA-1申請で提出したということがありえるはずです。
例として適切かわかりませんが、これは言ってみれば、オーケストラのオーディションで「カデンツァも弾け」と書いてあったのに、途中の受験者からカデンツァなしでもOKとなったようなものです。そもそも要件を緩和することについては私は大賛成ですし、大変に有難いことだと思うものの、緩和するならば、先に申請を出した人たちにも何らかの修正機会が与えられないことには公平ではありません。
ましてや、この事業開始の当初は第三次申請が行われるかどうかも未定であり、「予算消化によっては第二次で打ち切る可能性もあるので出来る限り早めに申請してほしい」という方向性があったと記憶しています。これを真に受けて早めに出した人たちが小規模な補助金しか受けられず、後から要件緩和されて申請した人たちが諸々追加しやすくなった状態でA-2という大きな金額の方に出しえる、というのは公平性に欠けるでしょう。
繰り返しますが、要件緩和については私は大賛成です。ありえないぐらい手厚い緩和だと感じます。企業の常識などを考えれば、当初ぐらい要件が厳しくても仕方がないとすら思う立場です。ですので、私が意見申し上げたいのは、要件を緩和すると決めたならば、第一次・第二次で申請した人たちにも修正申告や取り下げて再申請の機会を作るべきではないのかということです。
なんと現状、一度「A-1で出します」「A-2で出します」と決めて申し込み番号を取得してしまうと、その変更は一切できないようになっているんですね。「タクシー代も入れられるならA-1じゃなくてA-2で出そう」と取り下げて再申請できる、ないしはCみたいな新しい枠組みを作って要項変更に伴ってA-1に入れられなかった分を追加申請できるようにする…といった仕組みさえ作って頂ければ公平性も担保できるかと思うのですが、いかがでしょうか。
それから、ここまで書いたのであともう一つだけ。すでに申請したものに対して、「事務局側で経費明細書のフォーマットを作ったからこちらで提出し直してくれ」という連絡が来る事例が頻発しているようです。確かに第三次申請段階になって、いままでなかった「経費明細書のフォーマット」がアップロードされていました。
それを使おうとした友人や教え子たちから、事務局のフォーマットがあまりにも使いづらいので助けてほしいというヘルプが多々。どれどれと見てみましたが、まあ確かに使いづらいところが多い。とくにMacでは色々問題が出ます。これをほんとに使わなきゃいけないのか?と気になったので、コールセンターに「これって、既に提出した自分たちなりの経費明細書フォーマットを事務局側のフォーマットにわざわざ打ち込み直さなきゃ駄目なのでしょうか?」と聞いてみたところ、「問題が頻発しているようなので、ご自身の経費明細書のスタイルでも構いません」(9月25日付けで通達あり)とのこと!コールセンターの方は何も悪くないのですが、電話しながら椅子からずり落ちそうになりました。
自分でフォーマットを作れない人にとっては事務局準備のファイルは有難いものだと思いますが、それを使わなくてもいいなら使わなくてもいいと明記すべきです。それだけでかなり負担を解消できるのに…。こういうところが本当に惜しいなと思います。
以上、制度の改善と誰かお困りの方の参考になればと思い、ブログにさせて頂きました。こんなことを書かずに自分だけ上手くやるという方法もあるのでしょうが、それでは我が国の文化芸術のあり方は何も変わりませんし、私はそうしたくありません。そういう利己主義は文化芸術を滅ぼすだけであり、(不完全だとしても)利他主義で動きたいのです。
今回の施策に感謝するとともに、現場の声をきちんと届け、文化芸術をめぐる支援のあり方や文化芸術の未来について、いっそう関わっていきたいと思った次第です。また上記意見について応答を頂いたらお知らせさせて頂きますね。