ヴィラ=ロボス「弦楽四重奏曲全集」(ナクソス・ジャパン)

8月の執筆業の成果を頂きました。「制約のなかでの知的遊戯」と題して、ヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲全集CD冊子18000字(ナクソス・ジャパン)を執筆しています。

フランスの音楽祭を指揮しながら、また、ブラジル独立200周年コンサートの企画運営をやりながらこれを書くのは本当に大変でした。パリ→羽田の飛行機のなかでも全17曲の弦楽四重奏曲のスコアをひたすら分析し続けていました。

本盤は限られた紙面ではありますが、海外の先行研究を参照しつつ、「ヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲」というものの全体像を示しながら私なりの考察を加え、最後には全17曲の成立過程と核心と聞き所に触れることを志向しました。

とはいえ、特に第七番から第十七番までの弦楽四重曲については、無調であることとハイドンの弦楽四重奏曲との構造的関連など、相当複雑な問題が蓄積されています。これらをしっかり分析しようとすると構造図解や箇所箇所の関係性を示すための精緻な論考が必要となりますが、さすがに今回はそれらを掲載することができず、簡単な言及に留まらざるを得ませんでした。この作曲家の後期弦楽四重奏曲は海外の最新の研究でもまだ分析しきれていないところが多々あり、アナリーゼを専門とする方々の今後の研究対象としても極めて魅力的なものであることは間違いありません。

これまでにヴィラ=ロボスの「ピアノ曲全集」「合唱曲集」「交響曲全集」の解説を執筆ないしは監修してきましたが、弦楽四重奏曲はとにかく飛び抜けて文章を綴る難易度が高かったですね。それだけに、形になったものを手にしてしみじみしています。

謝辞には Eurochestries International と、この音楽祭で出会ったブラジルの素晴らしい弦楽四重奏団Quarteto Zucaのことを書かせて頂きました。このCDを通じてヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲の演奏機会が増えることに貢献できれば幸いです。

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