カサブランカ国際音楽祭を終えて

帰国しました。一年前にポルトガルの指揮コンクールで賞を頂いた時からはじまった、カサブランカ国際音楽祭での指揮という大プロジェクト。ただの優勝凱旋コンサートではなく、「オーケストラを組織して来てほしい」というリクエストに燃え、一年近く奔走してきました。描いていた夢を現実にすることができました。

モロッコに日本からオーケストラを連れていく、ということは簡単ではありませんでした。飛行機にして約24時間の移動。ましてやオール日本人作曲家作品のプログラム。思いに共感してくれるメンバーへの声かけ、楽器の輸送手配、宿泊先の選定と安全の確保、大使館との連携、スポンサーのお願いなど、膨大な仕事が必要でした。そしてその過程で、一筋縄では解決しない困難に何度も出くわしました。あらかじめ敷かれた道など全く無く、あらゆる手段を用いた「交渉」によって自ら道を作っていく必要がありました。日本人オーケストラ・指揮者の同国での演奏は今回が歴史上初になったわけですが、これまでそれが叶わなかった理由は、仕事を進めていくごとに分かって来ました。

でも、絶対に諦めたくなかった。それは音楽祭ディレクターにして親友のAdnane Matroneの夢に共感したから。彼の考える音楽の未来に、僕は心から共感しました。これをきっかけに立ち上げたAmasia International Philharmonicの皆さんに支えてもらいながら、彼の夢を超える仕事が出来たと確信しています。

我々が持っていった曲は以下です。

岡野貞一作曲/中川真文編曲:「ふるさと」
芥川也寸志:「弦楽のための三楽章(トリプティーク)」
武満徹:映画音楽「波の盆」より終曲
通底するテーマは、「ノスタルジー」。実は、ずっと芸術監督をしている東京大学教養学部「学藝饗宴」ゼミナールの今期テーマも「ノスタルジー」なのです。これも僕なりの「学藝饗宴」の実践のつもりでした。
演奏は、毎回スタンディングオベーションを頂く快心の仕上がりになりました。しかし演奏以上に私が誇りに思うのは、我々はモロッコの習慣にあわせながら、日本人としての「良さ」をフルに発揮したところです。「モロッコタイム」と冗談にされるぐらい定刻の概念がないこの国で、集合時間には他のどの国のオーケストラより先にきっちり集まり、誰に言われるまでもなく全員分のステージセッティングを迅速に仕上げていきました。ただゲストとして演奏しにいくのではなく、一人一人が自分の持っているスキルや経験を惜しみなく投入し、クオリティの高いものを作ろうとし続けました。

時間をかけて作ったマイクセッティングが本番直前にバラされたり(!)コンサート開演10分前に当日使用する楽器が届いたり(!!)コンサート開演時間が40分押し(!!!)になったりとアクシデントが多発する中においても、集中力を切らさず、日本人としての「美徳」を最終日まで貫徹した我々のメンバーのことを、僕は何より誇りに思います。

アーティストは、夢を現実にしていく仕事です。そのためには、ただ与えられた場で演奏するだけでなく、場を新しく作っていく努力をしなければいけない。少なくとも僕はそういうアーティストでありたい。31歳最後の大仕事を終えて、改めてそのことを誓いながら日本に戻って来ました。

モロッコのプロジェクトを応援頂いた皆様、ありがとうございました。少し休息して、また次のプロジェクトをはじめます。これからもオモシロイことを色々仕掛けていきますので、ご声援頂ければ幸いです。

We arrived at Tokyo. Everyone came back safely from Morcco to Japan. We made a historical moment, not only made a music. Everything was new and interesting, we study a lot of things in this period, cultulal difference, stimulating rhythm, hospitality, etc.

Thanks for spending time and perfoming with us. Thanks for singing in perfect Japanese.Thanks for supporting us with great affection. We can’t thank enough. We will never forget these memories for our whole life.

Aujourd’hui Morocco紙に掲載されました。
Aujourd’hui Morocco紙に掲載されました。
Oula TVに出演しました。
Oula TVに出演しました。
Adnane Matoroneと
Adnane Matoroneと

 

 

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