福井大学フィル2016年度初回リハーサル!

今年もまた福井大学フィルハーモニー管弦楽団さんからお声がけ頂いて客演指揮者を務めております。そしていよいよ今年度のリハーサルがはじまり、この週末は福井に行っておりました。定期演奏会を指揮したのは昨年12月でしたから、半年ぶりに福井を訪れたことになります。昨年のカリンニコフ一番に続いて、今年は大好きなドヴォルザーク八番!

今回は初回リハーサルということで全体の輪郭を共有しながら、色々な話をしました。ドヴォルザークがどういう人であるか、このドヴォルザーク八番が彼の作品のなかでどういうふうに位置づけられるのか、この八番という交響曲を貫くロジックとポエジーはなにか。瑞々しき歌と考え抜かれた構成、新鮮な音楽。随所にブラームスの姿が見えることを説明し、アーティキュレーションの書き分けと付点リズムの厳密さに拘ってリハーサルを進めつつ、(Here) I’m not just a pure musician, but a poet.  – 「私は純粋な音楽家であるのみならず、詩人なのです。」 というドヴォルザーク本人の言葉を紹介しました。自分自身そうありたい、と思うほど、僕はこの言葉がとても好きなのです。

一つのppでも、それは鳥が遠くで奏でるppなのか、太陽にすっと雲がかかったときの肌が一瞬ひんやりとするような陰りなのか。そしてそのポエジーがいかなる調で表現されるのか。転調、音楽の雰囲気がふっと変わる瞬間を大切に、誰のどの音によってその変化が導かれているのかを自分たちで考えるようにしてもらいました。ドヴォルザークはわずかひとつの臨時記号によって、セオリー的には数小節かけて転調すべきところを一瞬で転調してしまいます。溢れ出すようなメロディの魅力はもちろんのことながら、このブリッジこそがドヴォルザークの神業でしょう。この八番についていえば、まさに「自然は一瞬で姿を変えるものなんだよ。」と言うかのような鮮やかな転調が繰り広げられています。ドヴォルザークが自然のなかで静養しながら見出した「新しい手法」には、こういうことも含まれていたのかもしれませんね。

和音の切り替えや雰囲気を作るうえで2ndヴァイオリンの刻みがどれほど重要であるかをお話ししたあと、昨年のパートリーダーさんが、一番後ろのプルトからとても良い顔で目一杯弾いて下さっていたのが印象に強く残っています。定期演奏会のあと「セカンドヴァイオリンを続けていてよかった」と泣きながら笑っていた彼女の声がこだまし、昨年一年間一緒にカリンニコフに取り組んだあの日のことが思い出されて、思わず涙腺が緩みました。そしていま、昨年の中心学年であった学生さんたちは一番後ろのプルトにまわって後輩たちを支えている。そのうえで今年中心学年となった学生さんたちが一番前のプルトやトップ奏者として頑張っている様子を見ていると、大学オーケストラっていいなあ……と改めて思うのです。

リハーサル一日目の終わりには、皆さんが歓迎会を開いてくださって、知る人ぞ知る福井の焼き鳥屋の名店に案内して下さいました。今日の練習がむちゃくちゃ楽しかった、と言って頂ける幸せと共に、学指揮の方々を中心に音楽の話を沢山することができて幸せでした。ちなみに、二日目のリハーサルのあとにはそのまますぐ東京へ戻るつもりだったのですが、昨年の中心学年のみなさんが誘って下さり、おすすめの回転寿司屋さんに。こんなに巨大な海老が一皿130円というのを見てしまうと、東京でお魚を食べるのを躊躇してしまいますね…(笑)

そういうわけで駅前の恐竜に挨拶をして東京へ。一年かけて一つの曲を作り上げる喜びも苦しみも、すべて目一杯味わいたいと思います。福井大学フィルのみなさん、ありがとう!また二ヶ月後に!

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