一年間かけて取り組んでいたボローニャ歌劇場との仕事、なんとか終演致しました。公益財団法人のプロジェクトマネージャーなるものに抜擢頂いてオペラの全スケジュール取り纏めを担うことになり、最初はどうしようかと思いましたが、皆さんのお力とご好意に支えられて、何とかここまで至ることができました。判断ひとつで300人の時間や億単位の金額が動くということの責任の重さはかなりのものがありましたし、海を挟んだ国際共同制作ならではの意思疎通の難しさや、ほとんど「外交」といってもよいほどの複雑な交渉過程に悶絶する日々でした。
ソリスト、オーケストラ、合唱、演出、俳優・バレエ、舞台音響、衣装メイク、照明、字幕……必ずしも利害が一致しない多様なセクションすべてと連絡を取り合い、要望を理解し、雨の場合のリスクマネジメントを考えながら条件を最適化させていくというこの仕事は、まるで数万ピースのジグソーパズルを嵌めていくような仕事だったかもしれません。
しかし、いざ現場に入ってみると予想もしなかったような事態や要望に度々遭遇しました。そのときには、これだけ作り込んだパズルの完成品を一度壊して、もう一度その場で瞬間的に新しく組み立ててみせるような「即興」が要求されました。
どこまでそれが上手くできたかは分かりませんし、むしろ自分の無知や無力さを痛感することばかりでしたが、この仕事を通じて沢山の方々に出会えた事が、私にとっては文字通り有り難い経験となりました。関わって下さった皆様、聴きに来て下さった皆様、本当にありがとうございました。公演について、イタリアの24Oreというジャーナルに掲載頂きましたので、写真とともにご覧下さい。