福井大学フィル 学生指揮者のためのオンライン勉強会

常任指揮者をしている福井大学フィルですが、コロナの影響でキャンパスが閉鎖され、学生たちは合奏はもちろん、楽器にも触れられないような状況が続いていました。

まだこの状況は当面続くでしょうから、団員の皆さんの焦りを考えると心が痛みます。指揮者としていま出来ることは何かな…と考えて、こんな勉強会をしてみることにしました。定期演奏会のメインであるドヴォルザークの六番について、学生指揮者さんたち向けに自分の「読み」をお伝えするオンライン講座(自由参加)をやってみようと思った次第。幸いにも好評だったようで、シリーズ化して連続講義することになりました。

初回講座ではまず歴史的なところからスタート。ドヴォルザークってそもそも何者なんだというところからはじまり、交響曲第6番の成立背景や上演歴を追っていきます。ブラームスはワーグナーの指揮でヴィオラを弾いていて、エルガーはドヴォルザークの指揮でこの交響曲(セカンドヴァイオリンだったそう)を2度弾いている、というのはめちゃくちゃ面白いですよね。

そしてこれらの作曲家同士の影響関係をまとめたのち、「ブラームスの交響曲第2番とドヴォルザークの交響曲第6番は本当に似ているのか?」という比較を切り口にして、交響曲というものの構成とソナタ形式について概説していきました。福井大学では教育学部に音楽の授業があるため、一部の学生はしっかりこうした楽典的な知識を教わるようですが、そうでない学生さんも沢山のため、こうしたことを説明することには一定の需要がありそうです。(僕よりも専門の先生方のほうが詳しいことを教えられると思いますので、あくまで僕は指揮者としての観点から…)

ソナタ形式を説明するためにはちょっとした作文をやってみました。これは相当効果的だったようで、みなさん一発で構造が頭に入った様子。これを通じて、音楽の構成も物語の構成の一種なのだということを、つまり音楽も言語なのだということを感じて頂けたらいいなあと思います。一方で「展開部」とか、「主題労作」とか、日本語に訳された音楽用語は何となくまどろっこしく感じるので、講義スライドはすべて英語等で進めました。そのほうが理解も早そうですし、何より一度学んだことのある学生さんにとっても新鮮なものに映ればという狙いがありました。工学部系の学生さんはいずれにせよ卒論で英語文献に当たることになるでしょうから、この機会に英語の勉強にもなれば一石二鳥ですよね。

形式の説明においては、「例文」を出すだけではなくて様々な作曲家の事例をぽんぽん挙げていきました。大学オーケストラって、一年間ひたすら同じ曲を練習するので、意外と「知っている曲」が限定されがちだったりするんですね。古典から現代までいろんな曲を例に出すことで、それらにも興味を持って自分たちで聴いたり演奏してみたりしてくれたらいいなあと思います。

最後に、ドヴォルザークの交響曲第6番の各楽章の概要を整理し、1楽章の構成を主軸に分析していきます。時間の関係で展開部の分析は次回に持ち越しとなりましたが、二時間の講義でかなり良いところまで進んだのではと思います。学生さんから、「正直今まで曲が巨大な山に感じて、無我夢中で登っていたけど、今日で頂上までの方向性が定まった感じがした」という感想を頂いて嬉しかったですね。

少しでも団のレベルアップに繋がればいいなあと思って無償ではじめてみましたが、自分の勉強にもなるので僕も結構楽しんでいます。次回は1楽章の展開部の分析をメインに、和声の基本的なところを説明できたらいいな。リハーサルが叶わない現状にめげず、小さいかもしれないけど出来ることを重ねていきたいと思います。

 

福井大学フィル 学生指揮者さんのためのオンライン勉強会
福井大学フィル 学生指揮者さんのためのオンライン勉強会

 

 

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