先日は福井大学フィルハーモニー管弦楽団さんとの2019年度初リハーサルでした。今年のメイン曲はチャイコフスキー5番。やっぱり燃えます。そして振ったあとはしばらく頭から離れない…やはりとんでもない曲です。
このオーケストラを指揮して5年目となります。これまでは「客演指揮者」という名前でしたが、6月30日をもちまして「常任指揮者」という肩書きを頂戴することになりました。同団は63年の歴史を持つ福井県最古のオーケストラですが、「常任指揮者」という名前を頂くのは1980年以来約40年ぶりだそうで、とても光栄に思っています。
初心者の多い学生オーケストラとして指導・指揮の苦労も少なくはありません。当たり前ですがプロオケを指揮するのとは全く勝手が違います。最初の合奏ではびっくりするような音程が鳴ったりもしますし、管が読み替えを間違えていたり、弦のとんでもないボウイングに苦笑いになったりもします。でも、最初はみんなそういうもののはずです。そこからどこまで高めていけるか、どれだけ楽器と音楽を好きになってもらえるかが指揮者の果たすべき仕事の一つであろうと思っています。「オーケストラを育てる」という言い方は自分でするには何だかとても偉そうで好きではありませんが、このオーケストラにとっては、ただ数時間指揮してひょいっと東京に帰るのではなく、練習後も時間の許す限り個人練習や分奏などを一緒し、学生指揮者さんのレッスンをし、トレーナーの方々と協働して「ビルド・アップ」していくことが必要とされていると感じています。
どうしてそんな初心者の学生オーケストラ、しかも福井に必死になるの?と聞かれたこともあります。それは、福井という地域にすっかり魅せられてしまったから。そして、私に指揮のオファーを下さった最初の大学オーケストラだから。(そのころ私はまだ大学院生でした)何よりも、この団に関わる皆さんが好きだから。集まった団員さんたちの真っ直ぐな目を見ていると、なんとかしてこの情熱に応えたいと思わずにいられません。そしてまた、卒団生の方々や福井の音楽家の皆さんが力を貸してくださるときのあたたかさにいつも心打たれずにはいられません。困難に直面して泣いていた学生さんが、定期演奏会が終わった後のレセプションで「楽器をはじめてよかった。一生忘れられない経験ができました」と晴れ晴れとした顔で挨拶してくれるのを見ていると、ああ、生きていてよかったと思えるのです。毎年ほんとうにたくさんの学びと感動を頂いています。
既に2020年度も共演が決定しています。ただ、常任指揮者という名前になっても、団の方向性や意志を決めるのは(もちろん私の任期も!)その時々の学生さんであるべきでしょう。ですから私は常に「演奏のクオリティ向上と演奏会の成功のために何をすべきか」という観点から学生さんたちと向き合い、協働しながら、できることを目一杯やって参ります。いつも応援を頂いている皆様、本当にありがとうございます。これからも一層どうぞよろしくお願いいたします。