直島公演を終えてしばらくイタリアとスイスに。スカラ座でストレーレル演出の「フィガロの結婚」を見て、ミラノからチューリヒに向かう間にヘルダーリンの讃歌「ライン」を読み、ブラームスが交響曲第1番を書いたリューシュリコンを訪れ、帰国してすぐにベートーヴェン第9のリハーサル。
日本に戻ると、いつの間にかあの猛暑も過ぎて秋の空気!第九を指揮したのち、東京→福島→東京と毎日移動して本番を二つ。
1.まずはエルシステマ相馬の弦楽器教室の発表会。ベックのシンフォニアにエルガーの朝・夜の歌、そしてヴィヴァルディのダブルチェロ協奏曲にフランク・ブリッジのアイリッシュメロディ。バロック音楽とイギリス近代音楽の組み合わせであると同時に、実はヴィオラとチェロにフォーカスしたプログラム。アイリッシュメロディは子どもたちが大好きになってくれてとんでもない音が鳴りました。何よりチェロの2人の子どもたちがとってもよく頑張りました!
2.東京ではフェローオーケストラのキッズコンサート。0歳から参加できるコンサートで、昨年は小倉朗の「ブルレスク」やガーシュウィンの「パリのアメリカ人」など現代曲の管弦楽法にフォーカスしたプログラム。今年はロッシーニ、ビゼー、レハールと、オペラの名曲集だけで構成されたキッズコンサートにしてみました。フェローオケの皆さんの尽力のおかげで、メインのレハールでは、会場のスクリーンに子どもたちがその場で描いた絵が映し出される仕掛けが実現され、絵と音を自在に行き来することができて感動でした。さらにその場のアドリブで、お客さんも子どもたちもオーケストラの中に入って好きな楽器の横で「舞踏会の妖精たち(メリー・ウィドウのワルツ)」を聴いてもらうようにしました。
当初からやりたかったことは、ここに「舞踏会」を立ち上げるということ。視覚と聴覚の壁を子どもの柔らかい心によって取っ払うと共に、聴く-演ずるの壁を溶かし「参加する」にして、まさしく舞踏会のような賑わいをその場に立ち上げようとしたのです。最後、指揮台に上がってくれた子どもの手をとってレハールを指揮してもらっているとき、本当に2人でワルツを踊っているような心地になりました。アンコールはシンバルが会場を歩き回りながら叩くシュトラウスの「雷鳴と雷光」!これからも即興を大切に、インクルーシヴなコンサートを様々に試みていきます。音楽にできることはたくさんあると信じて!