フランスから帰国してすぐに、東洋財団様主催、関西フィルと神戸市混成合唱団さんとの「四季&海道東征」公演でした。兵庫県芸術文化センター大ホールの予定座席が満席となる大盛況で終演しました。
「四季」ソリストの中野りなさんはこれからの活躍が嘱望される17歳のヴァイオリニスト。ここはこうしてみようよ!と二人でイマジネーションを持ち寄って音にしていく時間は大変幸せなものでした。
信時潔の大カンタータ「海道東征」は想像するより遥かに大変な曲で、膨大なエネルギーを使いました。しかもこのコロナ禍とあって、門真ルミエールホールでの前日リハーサル(これが唯一の全体リハーサルでした)は、オーケストラが舞台、合唱団が客席後方というディスタンス配置で練習を余儀なくされました。つまり180度回転しながらこの曲を指揮してアンサンブルを整える必要があり、目も耳も棒も超絶技巧を要求されました。
さすがにちょっと困惑しましたが、神戸市混成合唱団さんと関西フィルの皆様の献身に支えて頂き、なんとか本番を迎えることができました。合唱団の皆さんとあらかじめ合唱リハをさせて頂けたことが救いでしたね。パート譜とスコアに音間違いや記譜の相違が多く、このことにも随分苦しめられました。これまでの演奏者の知見を持ち寄ってきちんとした校訂版を作る必要性を痛感しました。(いつか作りたいところです)
自分としては心残りがあるところも多々ですが、芸文ホールいっぱいのお客様が涙して聞いて下さっているのを見て、心底嬉しかったです。最後に演奏したのは同じく信時潔の「海ゆかば」。人それぞれの思いや歴史性が宿る曲ですが、私は今回、打楽器を極力省いてレガートで演奏することで、自分なりのメッセージを込めたつもりです。
長くお世話になっている関西の友人知人や自分の家族に演奏を聞いてもらえたことも嬉しいことでした。どんな人生を送っているんだ?と長らく訝しんでいたであろう祖父母を初めてコンサートに招待できたのもよかった。この大曲を関西で指揮する機会を下さった東洋財団様、そして関西フィルと神戸市混成合唱団の皆様に心から御礼申し上げます。
終演後ゆっくりご挨拶もできませんでしたが、お運び頂いた皆様、本当にありがとうございました。また来年にも関西で指揮する機会を頂いておりますので、ぜひお聞き頂けたら嬉しいです。