リハーサル・ラッシュの日々です。木曜日は新宿、金曜日は蒲田、土曜日は立川で日曜日は高尾。有り難い事にこれから12月末まで週末はほとんどリハーサルと本番が入っており、こうして沢山の方と一緒に音楽をさせて頂けるのは本当にとても幸せなことだなとしみじみ思っています。
さて、この週末は指揮させて頂いてもう4年目になるアンサンブル・コモド(学生音楽ボランティア団体Commodo)、そして正指揮者を務めているWorldship Orchestraのリハーサルでした。アンサンブル・コモドさんとは毎年夏になると東北を回ってボランティア演奏会を開催させて頂いています。2012年からはじまったこの活動も早いもので4回目。2012年当時に大学一年生だった奏者のみなさんは今年の春に巣立っていき、学生が主体の団体というころもあって、今年はずいぶんとメンバーが入れ替わりました。私もあのときは大学生だったなあ、と思うと月日の流れる早さに驚くばかりなのですが、ともあれ、震災の傷跡が深く残る2012年に石巻の老人ホームや体育館で演奏させて頂いた経験が、私にとって人生を変えるきっかけの一つとなったことは間違いありません。
たとえどれだけ聴いて下さる人が少なくても、どんな場所であっても、心から心へ届くように全身全霊を込めて演奏しなければならない。音楽はそもそもにおいて何かの「役」に立つものではないかもしれないけれど、音楽にしか出来ない何かを心に生み出すことができる。私にとってアンサンブル・コモドは、そのことを頭ではなく身体で経験させて下さったオーケストラです。ひっそりと海に背を向けて咲く向日葵を、夏草が生い茂った中に落ちた泥だらけの上履きを、私は一生忘れないでしょう。あのときはじめて演奏したSound Of Musicメドレーはいつの間にか自分の得意曲となり、海外でのコンサートツアーでもこの曲を取り上げていくうちに、今回で演奏するのはなんと45回目(!)となります。
この曲を私の指揮で一緒に演奏したい。なぜか特別に思えるから。と言って下さる方が嬉しい事に沢山いらっしゃるのですが、もしも特別に思えるものがあるとすれば、それは「祈り」としか言いようのない、あのときの経験と想いが詰まっているからでしょう。貴重な経験をさせて頂いたことに感謝して、アンコールに愛奏しているYou raise me upと共に、自分の成長や思考の変化をこの曲に投影しながら末永く演奏していきたいと思っています。
Worldship Orchestraもまた、今年は随分と顔ぶれが入れ替わりましたが、一言でいってめちゃくちゃアツい時間になりました。人数は多くないものの、だからこそ一人一人が自分の責任を自覚して音楽に乗り込んで来て下さることを実感します。初回リハーサルにはなんとHuffington Postさんの取材も入って気合い十分。合奏一発目を振り下ろした瞬間に鳥肌が立ったのは久しぶりかもしれません。ジョン・ウィリアムズメドレー冒頭のトランペットの皆さんが素晴らしく、また、ラターのマニフィカートも最高に楽しかった。選曲に悩んだ甲斐がありました。頭から離れなくなるような音楽の力に支えられ、今回もまた、心の通うチームが作れることを確信しています。