今年は節目の演奏会が続く。音楽監督をしているエル・システマジャパンの相馬の音楽祭が第10回を迎える。記念すべき第10回に何の曲をやるか?自分のなかでそれは早い段階から決まっていた。武満徹をやるのだ、と。それも、あえて「海」ということをテーマとしてセレクションし、「系図」で終わろうと。
小学生から高校生たちのオケで、あの難解な「系図」を?無謀ではないのか?そんなふうに言われるのは覚悟のうえ。最初は何だかわからないかもしれないけれど、すぐにわからないものがあったほうがいい。そして、じわじわとわかってくる過程を楽しんでほしい。速さやわかりやすさばかりが重宝される世の中だが、そうじゃないものと向き合えるのが音楽であり、教育だと信じる。
はじめてみんなでこの曲を演奏し、リハーサルして整えていったあとの響きにある子どもが目を真っ赤にしてつぶやいた。「すごい曲…」。そう、それでいいんだ。
