文春ギャラリーにて「追悼 立花隆の書棚展」オープニングへ。あのラビリンスのごとき仕事場「猫ビル」を薈田純一さんの写真で振り返りながら(実は僕の指揮棒がこっそり一本映り込んでいます)先生と過ごした時間を思い返します。それは、自分の人生を左右するには十分すぎるほど刺激的な時間でした。
猫ビルは、偉大なる師の仕事場であることはもちろん、僕にとっては昼夜を忘れて知の世界に入り込むことができる隠れ家でありました。圧倒的な量の本と資料に囲まれながら、「自分の人生の残り時間で、ここにあるうちのどれだけの本を読むことが出来るのだろうか?」と問わずにはいられない場所でした。ふっと猫ビルに立花先生が姿を現して、「あの本取ってきてくれる?」と言われた時、その場所がただちに思い浮かばないと大変に悔しい思いをしたことを鮮烈に覚えています。
ここにあるものはただの飾りとしての本ではなく、実用のための知の蓄積でありました。ゆえに昨日のニュースで発表になったように、全ての本を古本屋に流すというご遺志は、本が本として生きることを第一にし続けた立花先生らしいなと思います。あの膨大な蔵書はあくまで「実用」のものであり、コレクション的なことに先生はほとんど興味がありませんでした。だって、本は飾りではなく自らの血肉になってこそでしょう。そんな先生の声が聞こえるような気がしました。
猫ビルで先生と過ごした日々に教わったものは限りないけれど、究極的には「知ることは何よりも楽しいことのだ」ということに尽きるように思います。先生のように好奇心の炎を燃やし続けて自由に生きたい。年を重ねるにつれて、それがどれほど難しいことであるかを実感します。
レセプションでは大先輩の方々や立花ゼミ時代の知人にも会うことができて大変に良い時間を過ごさせて頂きました。新年度に良い「喝」を頂いた気持ちで、今年もめいっぱい駆け抜けたいと思います。
(4月30日夜10時〜予定で、NHKスペシャル「立花隆 最後の旅」が放送されます。ぜひ皆様ご覧ください。)