弔辞、あるいは出発のクレド

ご遺族の方々のご承諾を頂きまして、我が師・村方千之を「偲ぶ会」(2015年4月29日、於:京王プラザホテル)にて読ませて頂いた「弔辞」をここに掲載させて頂きます。

村方先生がレッスンしていらっしゃった50年間の歴史を考えれば、全くの若輩者に過ぎない私が弔辞を読ませて頂いて良いのかどうか、最後まで悩みましたが、そこで生身の人間が声にして読むという、私の最後の「演奏」を先生に聞いて頂きたいという思いでこの文章を執筆させて頂きました。先生の足跡を少しでも多くの方に知って頂けたら幸いです。

ラロ、ボードレール、ヘルダーリン

もう長い付き合いになるチェロの友人が卒業試験で弾くラロのコンチェルト。試験前に一度聞いてほしいということで合わせに一緒させて頂いたのだけれど、最後の通しで僕は圧倒された。はじめてオーケストラで会ったころに自信無さげにソロパートを弾いていた彼女はもういない。自分の世界を一生懸命に創り出してそこに入り込もうとする、ある種の迫力を備えたチェリストがいた。しかし同時に、音楽に対して真っ直ぐに向き合おうとする姿勢は昔と変わっていなかった。