Voices

これまでに頂いたご感想や、お世話になった先生方、そして一緒に演奏して頂いた皆様から頂いたメッセージを掲載致します。(敬称略とさせて頂くことを何卒お許しください)

メッセージをお寄せ頂ける方はContactよりお気軽にご連絡頂けましたら幸いです。

鈴木 寛(東京大学教授兼慶應義塾大学教授/文部科学大臣補佐官、元文部科学副大臣)

鈴木 寛(東京大学教授兼慶應義塾大学教授/文部科学大臣補佐官、元文部科学副大臣)

「ついにめぐり逢えた。」母校の同窓会で、25歳も後輩の木許裕介君に、初めて出逢ったとき、久しぶりに小躍りする自分がいた。実は、木許君のような人を、僕は、ずっと探し続けていた。

比較文化論および比較芸術を専攻し、学術修士号を東大で取得後、プロ指揮者になった木許君。まずは、一流の指揮者として、アジアいや世界のクラシック界で大活躍してほしい。音楽の素晴らしさを、多くの国の次世代に伝えてほしい。そのタクトで、人々を魅了し、木許音楽に共感、共鳴した人たちの間に、幸せの絆が、どんどん生まれ広がるよう、頑張ってほしい。

そして、僕と一緒にやってほしいことがある。ソーシャルコンダクターを育てること。その育て方を究め、広めることだ。リーダーの育成が声高に叫ばれるも、それが前世紀のリーダー像で語られていることに、違和感を感じていた僕が、悩んだ挙句、行き着いたのが、ソーシャルコンダクター、ソーシャルオーケストレーションというコンセプトだった。音を自分で鳴らさない音楽家、指揮者。それぞれのプレイヤーの力を最大限に引き出し、様々な音色を「交響」させ、ハーモニーを作り出し、音の力で空間を一変させ、人々の心に「楽」をもたらしていくマジック。このマジックを、僕は木許君と一緒に、世の中のいろんなところに広めたい。音楽の世界には、その才能をもった人材を見つけ出し、マジックを修得させる指導法と育成のコミュニテイがある。村方千之先生は、日本での先駆だ。村方先生の一の弟子として指揮法のマジックの真髄を深く修得し、しかも、多文化の共生とクロスカルチュラルな協働について深い教養と洞察を持っている木許君と、グローバルリーダーの養成の分野で、協演できるのは本当に嬉しい。これからもよろしく。


寺田 寅彦(東京大学大学院総合文化研究科教授)

寺田 寅彦(東京大学大学院総合文化研究科教授)

「光に向かって ― 時代の感性をとらえる木許裕介氏」

世の中には最短距離しか求めないタイプの人がいる。電車では一番混む車両に乗り、車に乗れば交通量の多い幹線道路を走り、歩いては直線の道を歩く。時間の無駄を省いているようで、結局は駅構内の混雑に巻き込まれ、車道の渋滞に引っかかり、歩道のそばを猛スピードで走る車に煽られるはめになる。木許裕介氏はその最短距離をあえて遠ざける。車窓からの眺めを味わい、一歩脇道に入って秘められた美を見出し、なだらかな丘の道の起伏を楽しむ。余裕をもって時を過ごす術を知っているのだ。

それは木許氏の思考形式にも表れている。「≪disposition(配置)≫、≪exposition(展示)≫、そして≪composition(構成)≫という三つの連続する位相」、これが木許氏が論文「月の光と妖精―世紀末パリにおける人工光技術の展開と感性の変容―」でとった論の展開だった。十九世紀のパリにおける人工光技術を入り口に、当時の光に対する感性を論じるために、このような論理展開は決して最短コースではない。しかし、あえてこの三つの≪-position≫を合理的に順序立てて論の拠り所としたところに、木許氏の独自性がある。この時代の人工光を論じた論文は数多くあるが、木許氏の論は直線的ではなくとも段階的な展開を経ることで、他の論者が見落としてきた当時の感性の細部を丁寧に掬い上げた。電気という極めて科学的な現象を描く表現に、妖精という実に神秘的で美しい言説が登場することを説得力をもって論じることができたのは、最短距離を求めないがゆえの木許氏の幅広い視野ゆえであった。

木許氏のサイトは氏の感性との出合いの場である。デジタル化の時代、サイトは光という支持体によって成立している。この光に向かってぜひ多くの人が集ってほしいと願う。


Giovanni Bovisse (Violinist / International School Manila Strings Director, Director of Tondo Chamber Orchestra)

Giovanni Bovisse (Violinist / International School Manila Strings Director, Director of Tondo Chamber Orchestra)

It was an amazing opportunity to have Mr. Yusuke Kimoto as a guest conductor for the underprivileged children of the Tondo Chamber Orchestra (TCO) of Manila, Philippines.

Mr. Kimoto was able to challenge the young musicians to give their best demonstrating great communicative skills despite the language barriers and his performances have been praised by the public and critic. Not only Mr. Kimoto succeeded in preparing wonderfully a variety of repertoire but he left quite a good impression in Manila and inspiring young musicians to further dig into music and, hopefully, to take up conducting.

TCO is looking forward to cooperate again with this talented conductor and is honored to have him among its friends and supporters.

フィリピン-マニラのトンドチェンバーオーケストラ(TCO)という、恵まれない子どもたちのためのオーケストラのゲストコンダクターに木許裕介氏を迎えたことは、真に素晴らしい機会でした。言語という壁があるにも関わらず、木許氏は素晴らしいコミュニケーションスキルを発揮し、さらには多くの人々や批評家によって賞賛を得ている彼の能力を発揮して、若い音楽家たちが自身のベストに至る刺激を与える才能を有していました。

木許氏は驚異的に幅広いレパートリーを重ねることに成功しているのみならず、彼はマニラにおいて極めて良い印象を残しています。そして、若い音楽家たちが音楽にさらに精を出すよう、そして願わくは指揮をはじめるように感化しているのです。TCOは再びこの才能ある指揮者と協同することを心待ちにしていますし、その友人たちや支持者たちのなかで、木許裕介氏と共に時間を過ごせたことを光栄に思っています。


杉山 正(トランペット/ブラスエデュケーター)

杉山 正(トランペット/ブラスエデュケーター)

木許さんに会ったのは、2015年のクリスマスイブ。私がライフワークとして取り組んでいるStan Kenton楽団のクリスマスキャロルを中心としたコンサートでした。ジャズ愛好家なら誰もが知っているメイナード・ファーガソン(tp)、コンテ・カンドリ(tp)、フランク・ロソリーノ(tb)、カール・フォンタナ(tb)など、たくさんのスタープレーヤーを輩出し,20世紀最高峰のビッグバンドと称賛されたスタン・ケントン楽団。当時、楽団がリリースした数々のアルバムの中で、木管楽器を使用せず、金管楽器とティンパニー、チャイムなどを含むリズムセクションだけでクリスマスキャロルを演奏する「Stan Kenton Christmas」は斬新なものでした。そのレコーディングに使われた楽譜と同じものを随分前から所有していたので、ケントン楽団と同じゴージャスな金管の響きをなんとか表現したいと常に思っていました。

私が演奏家として取り組んでいるビッグバンドという形態は、日本においてコンダクターが存在しないのが普通なのですが、この日再現しようと思っていた金管楽器+パーカッションとリズムセクションの形態ではどうしてもコンダクターが必要となります。普段ジャズプレーヤーのみで構成されているビッグバンドのサックスセクションが抜けて、その代わりにクラシック奏者によるホルン、さらにティンパニーやマリンバ、チャイムなどが加わる形態は経験した事もなかった私ですので、誰をコンダクターに迎えたらよいのか随分悩みました。というのも、このクリスマスキャロルは日本国内ではほとんど演奏されていないこと、ジャズに対して偏見がないことが要求されるからでした。

知人に相談したところ、真っ先に名前が上がったのが木許さんでした。面識もないままお願いすることになったため、木許さんには、このコンサートのサウンドやアンサンブルのイメージを共有してもらうために音資料を送り、細部に渡ってのメールのやり取りが始まりました。木許さんには事前にスコアーを渡してありましたが、ジャズの要素がふんだんにちりばめられた楽譜に対して、普段クラシックメインに活動されている彼がどのように音楽を作り上げてくれるのか、少々の不安と多大な期待を持って会場入りした私のもとに、にこやかな顔で向かって来る木許さんを見て「彼なら大丈夫!」と感じました。

今だから明かしますが、実は参加してくれた奏者達は時期的にも多忙だったため、リハーサルは無謀にも本番当日のみという過酷な条件下でした。参加してくれた奏者達も本番当日が初顔合わせが大部分だったので、どこまでコミュニケーションが取れるか不安だったと思います。それを見事にまとめ上げてくれたのが木許さんでした。 さて、本番。木許さんからは、初めて耳にする音楽への探究心、柔軟性、偏見のない情熱とエネルギー、そして私達ジャズプレーヤーが持つ音圧や普段余り耳にすることのないジャズ特有のアンサンブルを楽しんでいる様子が伝わって来て、こちらも楽しんで演奏出来た事を嬉しく思います。その場でこのアンサンブルの常任指揮者になって欲しいと伝え、今日に至ります。

私は演奏の他に、ブラスエデュケーターとしても活動しています。私の師であったClaude Gordonは1960年〜70年代にアメリカで活躍した、バイオリンのヴァーチュオーソに匹敵するようなテクニックを持ったコルネットのヴァーチュオーソ達が実際に行っていた伝統的な練習方法を、現代の金管楽器奏者に伝える真の金管楽器指導者でした。ブラスキャンプと呼ばれる、彼が長年行って来た金管楽器奏者のためのセミナーを私が引き継ぐ形で2009年よりMassashi Sugiyama Brass Campを開催しています。これについて木許さんに伝えたところ、大変興味を持ってくれ、2017年2月に開催したブラスキャンプには忙しい時間の合間を縫って駆けつけてくれました。木許さんとは今後もエキサイティングなコラボレーションをして行けたらと強く思っております。


白小路 紗季(ヴァイオリン/カッセル州立歌劇場)

白小路 紗季(ヴァイオリン/カッセル州立歌劇場)

木許くんとは小学校の低学年を同じクラスで過ごしたのですが、勉強もスポーツも一番なだけでなく、抜群のセンスを持った小学生でした。遊びでも勉強でも、すぐに面白い発想をしてみんなを楽しませる人気者で、そして何と言っても作文の上手さは小学生とは思えないレベルでした。

私は本を読むのがあまり好きではないのですが、木許くんの作文には本当に魅きつけられて、大人になってからも文集でわざわざ読み返していました。 最後の一文でぞくっとしたり、ノスタルジックな気持ちになったり、私はもういい大人なはずなのに、なんで小学生の作文でこんなに魅き込まれるんだろう・・!と、文集を読み返すのが小さな楽しみになっていました。小学校を卒業して15年ほどして、facebookを通じて再会したのですが、私にとってはずっと憧れていた文豪が帰って来た!という夢みたいな感覚でした。そんな子が音楽を始めたと知って、つまりこっちの世界にやってきたという事で、もうそれはものすごい衝撃でした。

木許くんのもう一つの大きな特徴は、小さい頃からどの人に対しても礼儀があって、人を心から丁寧に扱うところです。すぐに人のいいところを見つけ出して楽しそうにしているのは木許くんのまわりの友達がよく見ている姿だと思います。初めて木許くんの指揮を見たとき、その木許くんが昔から持っているいいところを全て見ているような気がして、うまく言葉では言い表せませんが、音楽をやる意味を教わった気がしました。自分が20年以上無意識にやってきたことは何にも間違ってなかったんだとその時気づいて、すごく嬉しい時間でもありました。

去年の夏はフィリピンで3週間ほど一緒に音楽をしたのですが、一瞬たりともオーケストラのみんなへの敬意も音楽への愛情も忘れずに過ごしていて、木許くんは、指揮によって、生まれ持った才能を存分に生かしているんだと気づきました。もう文集の中だけでなく、その木許くんの芸術にこれからずっと触れ合えて行けるのは本当に幸せな事です。


砂原 伽音(ロシア国立オペラ・バレエ劇場ソリスト在籍中)

砂原 伽音(ロシア国立オペラ・バレエ劇場ソリスト在籍中)

私の所属する劇場の指揮者は「巧い指揮者の料理は美味い」と言いながら、よく料理を振舞ってくれます。木許さんも同じことを言っていたな、と思い出していたところでした。この場を借りて、彼について紹介させていただけますことを嬉しく思います。

木許さんは私を愉しませてくれる、美しく愛すべき人々のうちの一人です。出逢いのきっかけは、彼が指揮したヴィラ=ロボスの音源。音を聴いた瞬間、何より先に身体が動いて即興で振付けてしまった。音楽に関しては無知ながら、指揮者がどれだけ重要な役割を果たしているかだけは、分かっているつもりです。

指揮者無しにはバレエの公演は成り立ちません、というのはオーケストラピットは舞台よりもだいぶ低い位置にあり、奏者は譜面と指揮者しか見ていないので、指揮者がダンサーの動きをしっかり捉えて、奏者にキッカケを出さないと音が鳴らない....。先日の「白鳥の湖」の舞台で、3幕の王子のソロで指揮者がキッカケを間違えてしまい、ダンサーが踊れず音だけが会場に響きました。終演後、スコアを読み返しながら独りすすり泣いている指揮者を見たのです。私はそのとき、指揮者が抱えている悩みや、プライドがすこし分かった気がした。指揮者は指揮者である、これに気が付くまで、すこし時間がかかりました。

厳格な基礎を美とし、一瞬の躊躇も感じさせない誠実な古典を愛する者として、木許さんが指揮者であり―執筆者であり―研究者でいることを、友人としてとても誇りに思います。


豊田 麻子(料理家・学芸員/ミスユニバース2007年度ファイナリスト)

豊田 麻子(料理家・学芸員/ミスユニバース2007年度ファイナリスト)

木許さんにインタビューするという形で出会ったのが去年のこと。私は19世紀後半のフランス絵画を、木許さんは指揮の勉強と並行して、19世紀末フランスを対象とした比較芸術や感性史の研究をなさっているとのことで、すぐに意気投合しました。

同世代に面白い人がいるな…という印象でしたが、2度目にお仕事でご一緒させていただいた機会に、その印象は尊敬へと変わりました。どんな角度からの質問に対しても、自分の想像を遥かに超えた切り口でストライクを投げてくる。明晰な頭脳はもちろん、柔軟で鋭い五感とその言語能力に衝撃を受けたのです。身の周りのあらゆることから学ぶ謙虚さで、これからも進化を続けていく本物の芸術家なのだと思っています。


北畠 奈緒(フルート/ウィーン国立音楽大学)

北畠 奈緒(フルート/ウィーン国立音楽大学)

木許さんは、私にとって大学時代からの最も大切な友人の内の一人です。私が大学1年生の頃から今年で5年目のおつきあいとなります。私も今でこそ音楽を専攻として日々学んでいますが、以前は一般大学にいながら、音楽の道を志す身でありましたので、彼ととても似た環境で音楽と向き合っていました。節目には、お互いの近況を報告し合い、その度にとても良い刺激を受けています。

先日、福井大学フィルハーモニー管弦楽団の第63回定期演奏会において、木許さんは客演指揮者として、私は尾高のフルート協奏曲のソリストとして共演させて頂きました。リハーサルから本番まで数日間ご一緒させて頂きましたが、彼は緊張も疲れも、これまで一人で何千回と読み込んだスコアと向き合う時間も、すべてを楽しんでいるように感じました。コンチェルトでは、リハーサルで上手くいかなかったところを後に話し合ってみると、次の日のリハーサルでは完璧にクリアできていて、どれだけこの曲を勉強して来たのだろうと想像し難いほどです。

私にとってフルオーケストラをバックにコンチェルトを演奏することは、人生で初めての経験だったので、楽しみだった反面、正直不安も多くありましたが、木許さんが指揮者だったおかげで精神的にも大きく支えられました。本番当日の朝、会場までの移動のとき、彼のわくわくした表情は忘れられません。私は朝から緊張していて、本番の直前まで不安と緊張でいっぱいでした。しかし舞台へ足を踏み入れる直前に、彼のあのわくわくした表情が想起され、この人と一緒に演奏するのだから大丈夫だと信じ、緊張はもちろんしながらも思い切って心を込めて演奏することが出来ました。

何度も彼が口にされていた「すべては愛」という言葉に、本番を共にして、深くうなずくことができました。ここまで徹底された「愛」は、人の心や行動、気持ちをこんなに良い方向に動かすことが出来るのだということを感じました。これからも木許さんらしさを忘れずに、ご活躍を期待しています。同時に、いつかお互い成長した姿で、また共演出来ますように。


原田 航太郎(トランペット/福井大学フィルハーモニー管弦楽団2015年度団長)

原田 航太郎(トランペット/福井大学フィルハーモニー管弦楽団2015年度団長)

木許先生と初めてお会いしたのは、大阪で先生が指揮されていたコンサートでした。福井から大阪まで向かう道中、どんな方なのだろうと楽しみにしながらも緊張していたのを覚えています。お会いしてみると、とても気さくな方でした。いざ目の前にすると緊張して話しかけることのできなかった私たちに優しく声をかけてくださり、丁寧に対応してくださいました。人柄もさることながら、指揮も素晴らしいものでした。分かりやすく明快な指揮、それと言葉にはできない「なにか」を纏ったものでした。あのとき私は、この人に指揮していただきたいと強く思いました。

作曲家の生い立ちや作曲された背景、その音の響きがもつ意味や曲のイメージ、序曲の練習ではオペラの物語も踏まえながらの曲作り、練習の合間の休憩時間にもさまざまなパートを回ってのご指導、メールでくださる参考音源やアドバイスの数々......挙げたらきりが無いほど、先生は演奏会本番まで、時間の許す限り私たちに本気でぶつかってきてくださいました。先生と交わしたたくさんのメールは私の最高の思い出です。

練習後にはほぼ毎回、宴会に付き合ってくださったり、演奏面だけでなく広報面でもアドバイスくださったりと、木許先生は「指揮者」としてだけでなく、たくさんの面で私たちの楽団を成長させてくださいました。団員全員の名前が言える方なんてそういないと思います。最初の方によく、「『先生』と言われるのはなんだかな…」と仰っていましたが、私たちにとって先生はまぎれもなく「先生」でした。

一年間ご指導してくださった今なら、初めてお会いしたとき先生の指揮に感じた「なにか」の正体が分かります。それはきっと、その曲自体やそれを演奏している楽団・奏者一人一人への「想い」なのだろうと。

木許先生は練習から本番まで、本当に楽しい時間を私たちと過ごしてくださいました。木許先生はこれからもさまざまな地・分野で活躍されていくでしょう。私たちの楽団が、そんな先生が初めて指揮した学生オーケストラとなれたことを心から誇りに思います。木許先生の今後のさらなる活躍を団員一同応援しております。


岩倉 有希(トランペット/福井大学フィルハーモニー管弦楽団2017年度団長)

岩倉 有希(トランペット/福井大学フィルハーモニー管弦楽団2017年度団長)

木許先生は、私がこのオーケストラに入団した時に新しくご指導に来て下さった先生でした。私の地元である福井は小さな町です。オーケストラの団体数も少なく、プロのオーケストラ団体もありません。そんな町に、先生がいらっしゃったあの時から、少しずつ何かが変化していたのかも知れません。 あれから3年目を迎えた今、先生が撒いていらっしゃった種が少しずつ芽吹き、花咲きはじめていることを感じます。

先生はいつもこっそり、リハ—サルがある日の少し前に福井に来て下さっていました。それが福井の様々なお店を回り、私たちの団のことや演奏会のことを伝えて下さるためだと知ったとき、びっくりしつつも、とても嬉しい思いになりました。先生はただオーケストラを指揮しにいらっしゃるだけでなく、福井という場所やそこに暮らす人たちのことまで深く知ろうとして下さったのです。

先生が福井で行きつけにされているお店や、訪問演奏先など、様々なところで私たちを応援してくださる方々がいらっしゃいます。「福井で若い子たちが頑張っているんだから応援してあげたい」という言葉に胸を打たれ、応援してくださる人々を前に、人々の温かさ、優しさを感じるとともに、それを原動力に今日まで励んでまいりました。

先生との3年は、長いようで短く、そして1年1年が全く違うものでした。毎年新しいことを取り入れていく精神、そして一方で、変わらず続けていくものの大切さを教わりました。小さな町だからこそ、フットワークの軽い学生オケだからこそできる、地域に根差した活動があるということを教わったのも先生からです。

大きな世界を見ている先生から教わることは、いつも私たちにとって新しく、そして可能性を感じるものばかりでした。そして私たちは、それを還元する術を学びました。演奏の技術的なこと以上に、音楽が純粋に楽しいと思える感覚、そしてその楽しさを自分の演奏で届けたい、聴かせたいと思う瞬間は、いつも先生の指揮の中で生まれるものでした。

今回、第65 回定期演奏会の開催に伴いメインとして演奏したシベリウス「交響曲第1番」は、冬を感じさせる幻想的な交響曲でありました。福井の雪景色に重なるところも多く、福井の冬を経験した私たちだからこそできる演奏があったのではないかと信じています。そんな私たちに勝るとも劣らぬ勢いで、先生はシベリウスに、そして福井に全身全霊を注いでくださいました。 福井という地で、先生の指揮のもと、この曲を演奏できたことを誇りに思っています。

これからも先生の素敵な指揮で音楽に色付く瞬間を目の当たりにする人が増えることを、そして先生の音楽への熱い想いがたくさんの人に届くことを、祈っています。


中 貴一(トロンボーン/九州大学芸術工学部フィルハーモニー管弦楽団2017年度部長)

中 貴一(トロンボーン/九州大学芸術工学部フィルハーモニー管弦楽団2017年度部長)

木許先生に九州大学芸術工学部フィルハーモニー管弦楽団の第47回定期演奏会の指揮をしていただくことなってから、実際にお会いするまで1年ほどの期間がありました。自身が部長を務める年の定期演奏会でしたので、その想いは並ではなく、大きな不安と期待を持っていましたが、プログラムを決める段階から熱心にアドバイスをしていただくなど、木許先生の熱い想いに次第に不安も薄れていき、最初のトレーニングで木許先生のご指導をいただいた時には、木許先生の作り出す雰囲気に僕の不安はすっかりなくなり、この演奏会は絶対に成功する、という確信を持っていました。

トレーニング以外の場所でも僕たちにとても気さくに話しかけてくださるなど、団員一人一人に気をかけてくださり、とてもありがたかったです。僕自身も、本番が近づくとどうしても焦っていたのか落ち着きがなかったのですが、木許先生はそんな僕の異変にいち早く気づき、声をかけていただき、一旦冷静になることができたのを覚えています。音楽面はもちろん、精神面でも本当に大きく助けていただきました。

今、演奏会が終わり、この文章を書いているのですが、僕たちの定期演奏会の指揮者が木許先生でよかったと、改めて心の底から思います。指揮者が木許先生だったからこそ、最高のプログラムが生まれ、濃密な練習期間を過ごせ、最高の演奏会にすることができたのだと思います。本番の舞台から見た木許先生が僕たちのオーケストラを指揮する姿は、何年経っても何十年経っても、きっと思い出すのだろうなと思います。本当に、本当にありがとうございました。木許先生と再びお会いすることができる日を心待ちにしております。きっとまた、ご縁がありますように。


八木 美紀(チェロ/九州大学芸術工学部フィルハーモニー管弦楽団2017年度インスペクター)

八木 美紀(チェロ/九州大学芸術工学部フィルハーモニー管弦楽団2017年度インスペクター)

木許先生とは、指揮の依頼をしてからはじめてのトレーニングまでの約1年間はメールでやりとりをさせていただいたのですが、最初の印象は素敵な文章を書かれる方だなというものでした。それもあってはじめてお会いする時は不安と緊張でいっぱいでしたが、直接お会いして指揮をしていただくと、オケの音の変わりようやその楽しさで毎回のトレーニングが待ち遠しくなるようになりました。

フランスものを得意とされる木許先生の指揮で演奏できて特に良かった曲は、プーランクのバレエ組曲「牝鹿」ではないかと思います。はじめの頃は独特の雰囲気や軽やかさが出せずに苦労していたのですが、先生に指揮していただくと途端に色が変わって驚いたことをよく覚えています。プーランクの音楽の鮮やかさや軽やかさ、気まぐれさ、洒落っ気などを先生に教えていただきました。特に数小節ですぐに移り変わっていく雰囲気の表現は先生の指揮とご指導あってのものでした。

牝鹿だけでなく演奏会の曲目はどれもあまり有名とは言えない曲でしたが、先生は全ての曲に強い思い入れを持って指導してくださいました。先生の並々ならぬ熱意のおかげで団員の中でも曲の良さを伝えたい、より多くの人に知ってもらいたい、という思いがトレーニングの度に強くなっていくのを感じました。そして本番後には来場してくださった方や賛助の方から、良い曲、良い演奏会でしたという言葉を本当にたくさん頂きました。

先生は私たち団員を指揮者とオーケストラという関係だけでなく、一緒に音楽を作り上げる「仲間」として接してくださいました。そんな先生だからこそ、あんなに楽しくて感動できる演奏会になったのだと思います。私たちの演奏会を木許先生に指揮していただけた事を本当に幸せに思います。


佐藤 絢子(フルート&ピッコロ/九州大学芸術工学部フィルハーモニー管弦楽団)

佐藤 絢子(フルート&ピッコロ/九州大学芸術工学部フィルハーモニー管弦楽団)

木許先生には、私が所属している九州大学芸術工学部フィルハーモニー管弦楽団の第47回定期演奏会で指揮をしていただきました。チェレプニン/遠き王女のための前奏曲、プーランク/バレエ組曲「牝鹿」、プロコフィエフ/交響曲第7番という、所謂マイナー曲ばかりを並べたプログラムでしたが、選曲の際に、この3曲の統一性や学生オケとして取り上げることの意義についてコメントをいただき、ちょっと変わった指揮者だなあと思ったのが最初の印象です。木許先生の中にある哲学や美学と、私たち団員のやりたい!という気持ちが一致してこのプログラムに決まり、練習が始まる前からとてもわくわくしていました。

本番までの数少ないリハーサルは、毎回あっという間に過ぎていってしまいました。どの曲についても深く知り尽くした上で、独自の解釈を交えながら楽しくお話してくださり、私たちは一層これらの曲の魅力に引き込まれました。私にとって特に思い出深いのは、遠き王女のための前奏曲です。クライマックスの部分を通る度に、夢中になって指揮を振ってくださっていた木許先生の表情は、きっとずっと忘れません。この知られざる名曲を、今回木許先生と演奏することができて幸せでした。

また、木許先生はいくつ目があるのかと思うくらい、奏者ひとりひとりのことをとてもよく見ていてくださり、想いをもって接してくれたことがとても嬉しかったです。休憩時間や懇親会では、団員だけでなく客演やエキストラの方とも交流を深められている様子が印象的でした。そんな木許先生は、指揮者としてオーケストラを指導してくれているだけでなく、私たちと一緒に音楽をしているのだと感じずにはいられませんでした。音楽への情熱と愛情で周りの人をどんどん巻き込んでしまうような木許先生との演奏会が終わってしまったことが寂しくて仕方ありません。

私は、アマチュアとしての演奏活動だけでなく、大学での研究やプロジェクト、地域のボランティアなど様々な立ち位置から音楽と関わる日々を送っています。音楽と社会、音楽と個人といった関係について考えながら、先を見失い、迷い、立ち止まってしまうことも多くありました。しかし、誰よりも音を楽しみ、だから音楽と共にいる木許先生に、改めて音楽の本質に気づかされました。私の中にあったもやもやとしたものを言葉にして示してくださるようで、学生最後の年にこのような方に出会えたことを幸運に思います。指揮者としてのみならず、多方面のアイディアに溢れた木許先生が、今後もどのように世界の音楽シーンへ影響を与えていくのか目が離せません。またお会いできる日を、一緒に演奏できる日を心待ちにしています。


瀬良 万葉(オーボエ/京都大学大学院、京都大学交響楽団OG)

瀬良 万葉(オーボエ/京都大学大学院、京都大学交響楽団OG)

初めての練習、どんな指揮をなさるのだろう、そうわくわくしながら、ホールの椅子に座ったわたし。そんな椅子のひとつひとつに向かって木許さんから繰り出される言葉、それは、もっぱら音楽性に関してのことであり、決して技術的問題ではありませんでした。その環境がわたしに思い起こさせたこと、それこそが、「音を楽しむ」ことでした。

彼は徹底して、「音をもっと楽しんで」という指示しか与えてくれません。それがかえって、そこにたどり着くための奏者としての技術的な試行錯誤の原動力になるのだな、と気が付きました。そういう歩みをたどったからこそ、本番のホールで、指揮者と奏者とが対等な立場で「音楽する」ことができたのでしょう。

いつの間にか忘れていましたが、技術を磨いた先にある「音を楽しむ」という経験、やはり文字通り、それが「音楽」の本質でした。そんな経験を共に作り上げてくださる指揮者・木許さんとの出会いは、わたしの人生にとてつもない豊かさを与えてくれました。

これからも木許さんのご活躍を、そして「ああ、音を楽しんでいるな」と心から言える人が増えてゆくことを、ささやかながらお祈りしております。


野口 彰英(クラリネット/NPO法人ワールドシップ 理事長)

野口 彰英(クラリネット/NPO法人ワールドシップ 理事長)

僕が木許さんに指揮を依頼するオーケストラの在り方は少し変わっています。まだオーケストラ音楽に触れたことのない小さな子ども達に生演奏とそのワクワクを届けるために、全く異なるバックグラウンドで楽器を学んできた奏者が全国から集まり、わずか数回のリハーサルで東南アジアに渡航。約1週間ほどの常夏の国の滞在で、都市を跨ぎながら1日2公演、3公演という過密なスケジュールをこなすことも珍しくはありません。全員が「一人でも多くの子ども達にホンモノのクラシックとの出会いを」という想いで、気力と体力の限界を乗り越えながら創り上げる日々そのものが芸術的な、ツアー型オーケストラです。

そんなチームをひとつにまとめる上で、木許さんは『指揮者』の本来の役割を大きく越えた『木許さん』にしかできない仕事をしてくださります。プログラムづくりから演奏会の流れに至るまで、一方で観客である子ども達の関心を惹きつけ、一方で奏者のエネルギーを高めるための創意工夫。クラシックの演奏には必ずしも理想的では無い環境でのコンサートが多い中、与えられた条件の中で、拘りを失わずして演奏効果を最大化するための瞬発的な判断。そんな柔軟さと勇気を併せ持つ木許さんは、なによりも人を大切にする方です。 あるコンサートにある仲間たちが集ったという奇跡を、決して忘れられない一瞬として演奏の中でプロデュースする力は、その場に居合わせた人々の心のなかに強い繋がりを生んでくれます。

毎回のツアーで、きっと木許さんにも「初めて」の出会いや経験が沢山降り注いでいるはずです。常に新しい挑戦を求めるワールドシップにとって、そして僕にとって、これからも幾つもの「初めて」に木許さんと共に立ち向かい学び合えることを、とても心強く思っています。


薮田 翔一(現代音楽作曲家)

薮田 翔一(現代音楽作曲家)

木許さんには、2014年のUUUオーケストラプロジェクトでヴァイオリン協奏曲(Rewire)を初演して頂きました。UUUオーケストラプロジェクトの演奏者、聴衆は現代曲に馴染みの薄い層です。そのような演奏会において、現代曲であるRewireの様な曲をプログラムに入れるのはとても挑戦的な事だったと思います。

そんな中、木許さんはオーケストラを力強くリードし、また緻密な演奏をしてくださいました。また、オーケストラの団員との一つの演奏へ向かっての全体の士気の高め方など、細部に至るまで行き届いた心配りに大変感動しました。古典の曲から現代曲の新曲まで、意欲的に取り組まれる木許さんのチャレンジングな活動から、私自身、目が離せません。


金森 詩乃(作曲家)

金森 詩乃(作曲家)

木許さんとの出会いは私が作曲したWORLDSHIP ORCHESTRAのテーマソングの初演です。ワールドシップツアーでは何回も演奏されている作品ですが、ここであえて“初演”という言葉を用いるのは、「邦人指揮者が邦人作曲家の作品を初演しなければ、日本の音楽界は発展、成長していかない。」という、彼が師匠から引き継いでいる信念と深く結ばれている言葉だと感じるからです。

初演するということは、ベートーヴェンやブラームスの作品のように繰り返し演奏され続け、ある程度の完成形が見えているものとは一味違います。生きている作曲家と話しながらまだ音になっていない音符を、初めて音楽として組み立てていく作業なのです。テーマソングの初演でいうと、それは私が曲頭に記した“Andante energico Tempo=80”とは何なのかを探すことでした。言葉では書ききれない、私が想い描いた音を、実際に音にするための探求です。フレーズや音、記号一つ一つに込められている真意を読み取ろうとする彼の熱意と、舞台ではない場所で指揮をしてきた経験無しにしては、このテーマソングの初演は成功しなかったでしょう。その初演を通して、一見当たり前の、それでいて楽譜を書いていると置いていってしまいそうな、「楽譜には音楽はない。音にしてこそ音楽がある。」という大切な事を体感させてくれました。そしてこれもまた、彼が大切にしている師匠の言葉であります。同年代の音楽家として、芸術に関わり続ける中で互いに刺激を受け、成長を確かめ合えるような存在です。


朝岡 さやか(ピアニスト/UUUオーケストラ3期 ゲストソリスト)

朝岡 さやか(ピアニスト/UUUオーケストラ3期 ゲストソリスト)

木許さんとは、2014年2月のUUUプロジェクトでご一緒させて頂きました。最初、現役東大大学院生の指揮者とお聞きした時は、一体どんな方なのだろう?!!と構えてしまっていたのですが、実際お会いしてみるととっても気さくで優しい方で、ホッとした気持ちでリハーサルに臨めました。今回私は、ピアノソリストとしてプロコフィエフの3番のコンチェルト1楽章を共演させて頂いたのですが、国内リハーサルでの第一回目の合わせで、ほぼ打ち合わせ無しの状態でバッチリとオーケストラとピアノが合ってしまった時は(木許さん・・凄い・・!)と心の中で感嘆の声をあげてしまいました。

国内リハーサル、国内演奏会、そして現地でのコンサートツアーでの共演と、数ヶ月かけて一緒に音楽作りをさせて頂き、リハーサルや本番を重ねる毎にオーケストラのメンバーが、木許さんを中心に一つになっていく様子を目の当たりにさせて頂きました。特に最終日のコンサートで共演、あんなにもオーケストラパートと一体になれた感覚は私にとっても生まれて初めてで、今でも忘れられません。 共演させて頂いたのが木許さんで本当に良かったと、心から思っています。木許さんがセブでの現地プロジェクト期間中、毎晩夜中にホテルの自室でオーケストラメンバーの希望者を集めて、夜な夜な開いていたという「勉強会」。スコアを見ながら学び合い、ビールを飲みながら語り合い・・このような一つ一つの積み重ねが、UUUの最終日の演奏を作り上げて行ったのだと思います。

「UUUプロジェクトの指揮者」というのは音楽家、指揮者としての能力はもちろんのこと、それだけでなく実に様々なものが要求される立ち位置だと思います。吹奏楽、管弦楽、協奏曲、様々なジャンルのプログラムを振りこなす、音楽への深い造詣と確かな技術。全国の様々な大学から集まるメンバー、社会人メンバー、年齢も楽器のレベル異なる皆を一つにまとめあげていく忍耐強さ、リーダーシップ。皆と同じ位置で「仲間」としてプロジェクトに臨む謙虚で真摯な気持ち・・。木許さんほどの適任者はなかなかいないのではないかと思います。UUUに参加される方々、それぞれ様々な思いがあると思います。「音楽」「学校生活」「将来」「社会貢献 」「国際協力「仲間」・・色々なキーワードが頭に渦巻きながら、期待と不安を抱いてセブの空港に降り立つことでしょう。そんな中、木許さんという一人の指揮者の生き方を間近で接し、語り合う中でも、多くのことを学べるのではないかと思います。そして木許さん、いつかまた共演させて頂ける日も、楽しみにしていますね!

(UUUオーケストラ4期のメンバー募集にあたって頂いた文章を掲載させて頂きました。)

會田 聖実(ヴァイオリン/UUUオーケストラ3期コンサートミストレス)

會田 聖実(ヴァイオリン/UUUオーケストラ3期コンサートミストレス)

私は木許裕介さんに、真の「オーケストラ」の楽しさを教えていただきました。木許さんがUUUの指揮者であったからこそ、私たちはあの奇跡のようなスタンディングオベーションの光景を目にすることができたのです。とてつもなく深く幅広い知識を持ちながら様々なフィールドで活躍され、スポーツも万能でとにかくアクティブ!そのほとばしるエネルギーに引き寄せられるように、常に周りには人の輪ができ、音楽と笑い声が響いています。

なにより、大変豊かな"言葉"を持つ方です。コンサートミストレスとしても一奏者としても、何度奮い立たされ救っていただいたかわかりません。そして指揮台に上がられた時、それはさらに輝きを増します。大げさな動きはなく、明確で淡々とした指揮。リハーサルではあまり口で多くを語られません。けれども木許さんから発せられた"魂の言葉"がダイレクトに奏者に伝わった途端、全体の響きが驚くほどに変わり、曲の情景、色彩や空気感までもが鮮やかに立ち上がってくるのです。指揮によってこんなにも違う音楽になるのかと、ただただ感激し合奏が楽しくて仕方ありませんでした。

セブ島では演奏環境や気候が日本と大きく異なるため思い通りにいかないことも多く、全体に焦りや動揺が広がったこともありました。それでも木許さんはまっすぐに立ち、何も言わずに笑っておられました。どんなことがあっても最後まで奏者を信頼してくださり、一人一人の個性や想いを全て受け止め包みこんで、その時最高の音を引き出してくださいました。
その存在がどれほどありがたかったことか!力強く絶対にぶれない"言葉"に、私たちだけでなく共演したセブフィルのメンバーも強く強く惹きつけられ、次第に本物の「オーケストラ」になっていきました。

最後に鳴り響いたのは、技術的なことを超えて心の奥底に直接染み渡る音、国境や環境の違いすべてを超えて"伝わる"音だったと思います。木許さんの音楽が、あたたかいからです。互いに尊重しながらのびのびと演奏できる心の通ったオーケストラ。「音楽を心から楽しみ音楽で遊ぶ」ことのできるオーケストラ。そんなUUUに熱い想いをぶつけてください。この指揮者の一振りで、きっとあなたの世界が変わります。


(UUUオーケストラ4期のメンバー募集にあたって頂いた文章を掲載させて頂きました。)

恒屋 梢海(ヴァイオリン/聖心女子大学、東京大学フィロムジカ交響楽団)

恒屋 梢海(ヴァイオリン/聖心女子大学、東京大学フィロムジカ交響楽団)

私が初めて木許さんとお会いしたのは昨年の夏、私が所属している東京大学フィロムジカ交響楽団のミニコンサートでカリンニコフの交響曲第1番を演奏した時でした。お忙しい所、4回程しか練習できない1曲のためにわざわざいらして下さいましたが、この短い時間の中での音楽作りに木許さんに指揮して頂いたことの大きな意味と尊さを感じることができました。

弾く人や吹く人によって楽器が奏でる音色が違うように、音を出さない指揮者という演奏者によって曲の雰囲気も変化し、オケ全体が纏まっていく。魔法をかけられたかのごとく、練習する毎に音が変わっていくこの過程が本当に楽しくて仕方がありませんでした。毎回の練習が楽しみで、演奏しながら自分がスッと曲に入り込んでいけたことを今でも鮮明に覚えています。

音が生きている感覚を肌で感じられ、また同時に体が痺れるようなコンサートになったのは、このカリンニコフという思い入れのある作曲家の曲を木許さんに振って頂いたからこそだと強く感じています。カリンニコフを通して木許さんに出会えて音楽そのものをこれまで以上に深く味わえるようになったと同時に、また木許さん指揮の演奏会に乗りたいと心から思いました。

そして今年2月には木許さんが正指揮者を務めていらっしゃる、ワールドシップオーケストラのフィリピンツアーに参加させて頂きました。この団体が活動していることは、私がいずれやってみたいと思っていたことの一つでした。音楽を通して誰かと感動を共有したいという前から思っていた夢を叶えてくれた、とても素敵な団体です。

練習に参加した時、カリンニコフの時に感じたものが再び蘇ってきました。それは「心から音楽をする」ということです。木許さんの指揮には、優しさと力強さと情熱がこもっています。力強くかつ丁寧さに溢れていて、そこから気づいたことも多くありました。初めてお会いして振って頂いた時にも感じてはいたものの、それをどう言葉で表したら良いか分からなかった木許さんらしさ。そのような木許さんならではの素敵な指揮の下でこそ、私は心からの音楽ができるように思います。その一振り一振りに詰まった思いを音にしたいと感じながら演奏できた時間は、とてもかけがえのない時間でした。

ワールドシップは、演奏者ひとりひとりが真剣に音楽と向き合うオーケストラです。音楽に愛のこもった方々の集まりだからこそ、演奏中は確かに心と心で会話をして、音によるコミュニケーションができていると感じました。そんな心と心の会話を全員でし合えて、それが子ども達や聴きに来てくださった多くの方々に伝わり、その思いが込み上げてきてフィリピンでの最後のテーマソングの演奏では様々な感情と共に自然と涙がこぼれてきていました。会場全体が一体となっていたのをこれ程までに身に染みて感じたのは初めてで、何にも代えがたい経験でした。

こんなに素晴らしい世界がここにあったなんて。このような世界を見せて下さった木許さんを始め、一緒に演奏して下さった仲間達と感動を共にできたことを本当に幸せに思います。胸いっぱいの感謝と共に、これからも多くの人達と感動の涙を流し合えるような、心に響く演奏がしたいです。


増田 杏菜(ホルン/慶應義塾大学、学生音楽ボランティア団体Commodo 2013,14年度代表)

増田 杏菜(ホルン/慶應義塾大学、学生音楽ボランティア団体Commodo 2013,14年度代表)

私が木許さんと出会ったのは2012年8月、学生音楽ボランティア団体commodoでの初めての東北チャリティー遠征の時でした。それから私が代表を務めた2年間を含む丸3年、奏者としても企画者としてもお世話になった方であり、大切な共演者でした。

お会いする前の印象は変わった人。経歴にも驚かされましたが、こんな無茶苦茶な要求を了承するなんて何を考えているのだろうと思っていました。しかし一緒に演奏した時に、音楽だけではなく演奏者も愛している人なのだと感じました。音楽に関して専門的なことは分からない私でしたが、奏者一人一人を見てくれていて、丁寧にその音楽に対する思いと共に一緒に音楽の世界を創りだしてくれる指揮者でした。実際アマチュアばかりのこの団体ですが、同じ曲を演奏していても奏でる音が、そこから生み出される音楽の世界は全く違う様相を見せていたように思えます。「指揮者が音を創る」はじめてそれを実感した瞬間でした。

私が一度はやめようかと悩んでいた音楽に関わり続けたいと思えた理由は、間違いなく、木許さんと共に、代表として奏者として観客として音楽に携わり演奏してきた日々でした。commodoがどんなに無茶な設定でも楽しんでもらえる音楽を届け続ける団体として活動できたのは、この木許裕介という素晴らしい指揮者が存在してくれたからであると思っています。


石山 智美(フルート/明治学院大学文学部芸術学科)

石山 智美(フルート/明治学院大学文学部芸術学科)

今からちょうど一年ほど前、せわしない日々の中で、ふと、自分自身の居場所や、心の在り処がわからなくなってしまった時、木許さんの掛けて下さった言葉に、気持ちが救われたのを憶えています。19世紀後半から20世紀初頭にかけて生きたオーストリアの詩人、ライナー・マリア・リルケの『若き詩人への手紙』の一節にのせて、「何でもゆっくり悩み、考えることが大事」と、焦らず無理をせず、自分らしく在ることの大切さや尊さを説いて下さいました。

大学一年生の春休みに、初めてcommodoでお会いしてから約二年半、これまでUUUやワールドシップなど、様々な有志団体で共演しながら、何度も忘れがたい瞬間を共にさせて頂きました。木許さんの指揮が生み出す音楽には、いつも何かの力が宿るのを感じます。その力が何たるかは、奏者の顔を見れば何となくわかるもので、おそらく、技術の有無以前に大切な事、指揮者と奏者の、音楽を介した「対話」による、生きた芸術の力なのだろうと感じます。

音楽家でありながら、詩人でもある木許さんが生みだす音楽には、その詩の世界に宿る、独特のあたたかみや、優しさがあります。ジェラルド・フィンジ作曲の「ピアノと弦楽のためのエクローグ」を客席で聴いた時には、まさにフレーズの一つ一つが美しい語り言葉でもってこちらに語りかけてくる様子があり、大変心打たれたのを憶えています。芸術家として、一人の人間として、大変尊敬する方であり、このような方がいるからこそ、私のようなアマチュアでも、ずっと音楽を続けていたいと思えるものです。